No.035 リスキーダイス ページ35
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ツェズゲラに俺たちから仕掛けようというバラの提案に乗って、いざ行くぞという時、Aが少し寂しそうな顔で俺の服を掴んだ
「ねえ、ゲン」
「なんだ」
「さっき、ヤバイ橋を渡るときは3人いっしょって言ったよね」
「ああ。言ったな」
「私は?」
「お前は俺たちに守られて一番安全なところにいろ」
「嫌だ。私もいっしょにヤバイ橋渡る」
「Aには死んで欲しくない」
「ゲンたちにも死んで欲しくない」
「俺たちは死なない」
「でも今回のはわからないんでしょ?待ってるだけは嫌」
「危ないことはさせたくねえんだ」
「ゲンたちが死んで、私だけ生き残る方が嫌」
Aはいつになく強情で、いまにも泣き出しそうになっているのに、俺の腕を掴んだ手にはしっかりと力が込められている
「俺たちは死なない」
「うそ。さっき死は確実とか言ってたじゃん」
「大凶なんか滅多に出ない。大丈夫だ」
「それなら私もダイス振る」
「それはダメだ。お前が俺たちの帰る場所なんだ」
「でも、」
「ツェズゲラは慎重な男だ。お前を見られたくない」
「やっぱり、私は足手まとい?」
「そういう意味じゃない」
「ひとりで逃げられないもんね、私」
「だから心配なんだ。わかるだろ」
「……うん。ごめんね、私ここで待ってる」
最終的には俺の意見に頷いてさみしそうに笑ったAを、俺はそっと抱きしめた
俺たちがいまからツェズゲラに仕掛けようとしていることは、大凶が出れば死ぬことは免れない、確実に危ない賭けなのだ
Aには死んで欲しくないし、ツェズゲラにもAの姿は最後の最後まで見られたくない
それはAが足手まといになるからではない
Aが俺たちの仲間だとバレて、もしツェズゲラがAに危害を加えようとしたら、俺は怒りで我を忘れてしまうだろうという自信があった
そうでなくとも、Aを人質に取られたりしたら、俺たちは3人ともなにも出来なくなってしまう
そういうのは全部、最後まで避けたいことだった
「私、ここで待ってる」
「近づいてくる生物は全部殺せよ」
「わかってる」
「もう生きてない奴でも見つかったと思ったら殺せ」
Aひとりを置いていくのは不安だった
こっちから仕掛けようと言った本人のバラでさえも、Aを置いていくことには躊躇いを見せた
でも、Aがここで待っていると言ってくれているのだから、覚悟を決めてしっかりと奪取してこなければならない
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ライ(プロフ) - カナさん» こちらも読んでくださってたんですね!ありがとうございます。楽しんでいただけたみたいでとても嬉しいです! (2020年9月28日 10時) (レス) id: 182c279fa9 (このIDを非表示/違反報告)
カナ(プロフ) - 最期まで読みましたがとっっっても面白かったです!!!!ゲンスルーの作品中々ないので読めて幸せでした。もし続編があったら楽しみにしてます!改めて完結お疲れ様です! (2020年9月28日 0時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ライ | 作成日時:2020年9月25日 10時