10 ページ10
「樹さん、お待たせしました、行ってきます。」
食器を片づけて、そのまま樹さんの作業部屋へ向かう。
「ちゃんと食った？」
「はい、すみません、気を遣っていただいて、」
「じゃあこれ。そんなにたくさんないし重くないはずだから。財布はこれ。」
行き先が書かれたメモを持って、家を出る。シンプルだけど見やすい地図を見ながら、
目的の場所へと向かった。
「………おはようございます、あの、」
ドアを開けて、中に声をかけると。
はーい、という声が聞こえて、奥から女の人が出てきた。
「はい、いらっしゃいませ。」
私とお店の人との間にあるカウンター越しに、お店の人が私を見る。
「ご用件は？」
「…あ、すみません、あの、田中、樹さんから、あの、」
「え！少佐のおつかい！？」
「……あ…はい…。」
あらーぁ、少佐のところのねーぇ、と言いながら、お店の人がいくつかの箱をカウンターに出した。
「はい、これで全部だよ。」
そう言いながら、箱を袋に入れてくれる。
提示された金額を支払って、お店を出ようとすると。
「少佐、イイオトコだろ。」
「…え？」
「またまた！とぼけちゃって！」
「痛。」
二の腕をばしっと叩いて、楽しそうに私を見る店員さん。
「………気をつけなよ、あんた。」
急に小声になってひそひそ、と囁かれる。
「……え？」
「少佐は手が早いって有名だからね。」
「…………はぁ…。」
「まぁいいや、またよろしくね！」
「……ありがとうございます。」
やたらと距離感が近い店員さんに見送られて、お店を後にした。
少佐、イイオトコだろ。
店員さんの言葉に、樹さんの顔が頭に浮かぶ。
……まぁ、確かに…
「ハンサムだ。」
思わずぼそっと声に出して、私は樹さんの家に向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 251人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月華
| 作成日時：2023年3月28日 1時
