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「ただいま戻りました、」
そう言って、Aが戻って来た。
「これが渡された部品です。」
「ん。」
「お財布はこちらに、」
そう言いながら財布を手渡される。
「さんきゅ。」
また何かあったら呼ぶわ。そう告げると、はい、と返事をして、Aは
勉強部屋へと戻って行った。
Aは、まあまあ規則正しく生活している。
昼になったら昼食を摂り、暗くなってきたらランタンに灯を灯して、キリの
いいところまで勉強をする。
夜。
今日の作業を終え、部屋に戻ってゴロゴロしていたけれど、さすがに腹が減って。
「…なんかあったかな。」
ひとりで呟いて部屋を出ると、階下からいい匂いがしてきた。
キッチンを覗くと、夕食の支度をしているA。
見覚えのない少し大きめの鍋を火にかけている。
うちの鍋じゃ間に合わなくて、買ってきたらしい。
俺に気づくと、「お疲れ様です。」と小さく口角を上げる。
メシの支度?と聞きながら、パントリーをのぞく。
「あ、はい。」
見覚えのない食材が少しある。これも多分、Aが今日買ってきたものだろう。
「樹さんも、食事ですか?」
「………いや…んー…。」
「?」
不思議そうな顔でこっちを見ている。
「なんか食おうかなーとも思ったけど…。」
「…はい。」
「……大したモンもねーし、出るのは面倒だし、」
これでいっか、と、ワインのボトルとチーズを少し。あとはグラスを持って。
「んじゃな、おやすみ。」
階段を上がろうとすると。
「あの、樹さん、」
「んぁ?」
「あの、気分を悪くされたら申し訳ありません、でも、」
階段を2〜3段上ったところで足を止めて、Aの方を見る。
「よろしければ、いかがですか、あの、シチューです、けど、」
あからさまに緊張しているので、それが少し面白くなって。
「……いや。いいの?」
そう言ってみれば、バッと顔が上がる。
「ぜひ、」
蚊の鳴くような声でそう答えると、皿をもう1枚出している。
小さなテーブルにスツールをもう1つ出す。
「せっかくだし。一緒に食ってい?」
俺もグラスをもう1つ出しながらワインを注ぐと、もう一度、小さな声で、
ぜひ、と聞こえた。
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作者名:月華 | 作成日時:2023年3月28日 1時