【金カム】坊主頭に興味が湧いて (ページ10)

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9話　押すなよ押すなよページ10

土方はアシㇼパを真っ青になった白石に手渡し、彼に何か耳打ちした後、部屋から去っていった。

土方さんが来たということと、白石の"彼女"という設定を聞かれてしまったことを忘れるように、白石は酒壺ごとグビグビと勢いよく仰いだ。

杉元「変な爺さんだったな…」

貴『……ニシン、食べます？』

…

まだ夜の澄んだ空気を残した早朝。
ミツキ達四人は辺り一面真っ白の森を進んでいた。

貴『ちょ、早く渡ってくださいよ』

アシㇼパと杉元が丸太の橋を渡った後、それに続くはずだった白石が渡るのに手こずっているので、しびれを切らしたミツキがそんな彼の背中を押してしまった。

白石「ばか、押すな！の…のわあっ！！」

ミツキは押されて川に落ちそうになる白石の半纏を引っ張るが、二人揃って雪の上に転んでしまった。

貴『す…すみません、つい…！頭打ってませんか？』

ミツキは慌てて立ち上がり白石に手を差し伸べるが、当の本人はポカンとミツキを見ているだけだ。

貴『？もしかして本当に頭を…』

白石「…！ああ、いや、なんともねぇよ」

そう言うと白石は、ミツキの手を取って立ち上がり、二人は杉元とアシㇼパへと追いついた。

杉元「刺青を追っているのはあと…前にお前が言ってた土方だよな？他の囚人を集めて、仲間にしてるんだろう？」

杉元の口から彼の名前が出た瞬間、白石とミツキがぴくりと反応する。

杉元「見つけられれば、一気に刺青を集められるかもしれない…。土方歳三…一体どんな男なんだろう…」

貴『………』

そうか…忘れかけていた。この人達は土方さんの味方ではないのだ。
こころなしかミツキの表情がかたくなる。

白石「とても70を超えてるとは思えねぇ若々しさがあったなぁ…人魚の肉でも食ったんじゃないかって、囚人達から言われてた」

アシ「にんぎょ？」

杉元「上半身が人間で、下半身が魚の化け物さ」

貴『たしか…人魚の肉を食べると、永遠の命と若さが手に入る…と』

杉元とミツキが人魚の説明をすると、白石が"八百比丘尼"という伝説の話をし始めた。

白石「人魚の肉を食べた娘が不老不死になるんだが、長く生きると愛する者の最期を見送るばかり。娘は何百年も生き、尼となってついには世を儚んで岩窟に消えた」

杉元「死すべき時に死ねない辛さか……」

貴『……あの人も…』

土方さんも、そうなのだろうか。
私の前からも…いつか……

そうして歩いていると、アシㇼパが何か見つけたのか「見ろ」と口を開く。