8話 土方歳三 ページ9
…
それから四人は少し離れた番屋にて、食と寝床を手配することが出来た。
眠そうにうつらうつらとするアシㇼパに、ミツキはそっと膝枕をしてやる。
杉元「寝床にありつけて運が良かったな」
白石「酒も手に入ったし、極楽だぜ…」
呑気にヘラヘラした顔つきで、白石は杉元の器に酒を注ぐ。
白石「ミツキちゃんも！ホラホラ」
「飲んで飲んで！」と上機嫌に酒を勧める白石にミツキは思わずほくそ笑み、器に注いでもらう。
三人でクイッと酒を仰いだその直後、聞き馴染みのある声がする。
爺「あんたら、やん衆に見えないね。旅行かい？」
杉元「ええ、まあ…」
貴『……！ひ…っ』
白石「？」
「土方さん」と言いかけてしまい、その言葉を喉奥にしまい込むように酒をグイッと飲んだ。
なんでこんな所に…。自分が何かしてしまったのかと記憶を巡らせるが、全く見当がつかない。
土方「めんこい子じゃなあ…わしの孫と歳も同じぐらいじゃ。抱っこして構わんかな？」
内心慌てるミツキを知ってか知らずか、土方がこちらへ来てアシㇼパさんを抱き上げる。
杉元「眠いと機嫌悪いですよ」
杉元の警告を聞いても尚、土方は静かに抱き上げた彼女の瞳を見つめた。
土方「綺麗な色の瞳だ…よく見ると青の中に緑が散っておる。ロシア人の血が混ざっておるのかな」
そんな土方に気付いたのか、白石が変な声を上げた。
「土方がここに来るのを知ってたのか？！」とでも言いたげな白石からの視線にミツキも、
「知らんがな！！」と、彼女も同じく視線を返す。
土方「同じ目をした知り合いがおる。この子の名前は？」
杉元「…？アシㇼパ」
土方「……和名は？」
想定外のことを聞かれた杉元は「和名？」と聞き返した。
土方「戸籍上の名前があるはずだ」
杉元「…さあ…聞いたこともないなぁ…」
杉元の言葉に土方は、「そうか」と一言だけ呟くと、杉元にその鋭い眼差しを向ける。
土方さん、アシㇼパさんに興味でもあるんだろうか…なんてことをぼんやり考えていると、ふいに杉元がミツキに声をかける。
杉元「あ、白石の"彼女"さん、ニシン残ってますよ。食べないんですか？」
白石「ブッッッ」
突然の追い討ちに、白石は思わず吹き出してしまった。
ミツキも飲んでいた酒でむせてしまい、よくわからない状況に杉元は「？」と疑問符を浮かべる。
土方「ふっ…わしはお邪魔かな。じゃ、失礼するよ。アシㇼパちゃん、元気でな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちあきんぐ | 作成日時：2024年2月25日 22時
