捌拾話「銅貨の標」 ページ36
カナヲside
カ「……」
あれは、宵柱の……。
炭治郎との邂逅のすぐ後、何処か逸る気持ちを収める為にブラブラと行き場も無く蝶屋敷の近辺を散歩していた。
特に目立った任務も入っていないし、縁側でのんびりと蝶でも眺めていれば良かったのだけど何処か気持ちが落ち着かないのだ。
そんな訳で、冒頭に繋がる。
特に確執がある訳でも無いが、思わず足を止めた。
──カナヲ、彼女にはあまり近付かない方が良いです。噂は知っているでしょう?
別に好き好んで噂を聞きはしないけど、それでも耳に入ってくるのが専ら彼女の噂だ。
でも、それでも私は何となく彼女の噂に疑念を抱いていた。
──あら、カナエちゃんその子……わぁ、カナヲちゃんっていうのね!私は金月雫、貴方のお名前は?
酷く朧気だけど……それでもとても優しく接してくれていたのを覚えている。
彼女は師範達と仲が良く、甲隊士の頃から良く蝶屋敷に出入りしていた。
両親の愛情を知らずに育った私にとっては、春の木漏れ日の様な暖かさを感じた物だ。
ある日、急に彼女の噂が流れ始めてからは交流は減ってしまったけど。
カ「…………」
何となく話しかけるのが憚られて、立ち止まっていると不意に彼女の綺麗な黒髪がサラリと揺れた。
ユルリと、彼女の白色の双眼が此方を向く。
『あら、カナヲちゃん……どうしたの?お散歩?』
カ「……」コクッ
『そうなの!私はこれから任務でー……どうしたの?』
懐にしまっていた銅貨を取り出そうとして、不意に手が止まった。
──心のままに生きる!!
柔らかくも、強かにそう宣言してくれた彼の赫灼の瞳が頭に思い浮かんだ。
全てを見透かしそうな彼女の瞳に何となく見つめられたく無くて、少しだけ俯いて地面を見つめた。
──カナヲちゃんの髪はサラサラだねぇ、羨ましいよ。
カ「……」
『え、わ……っ』
小さい頃、髪がぐしゃぐしゃになるほど撫でられたのを思い出し何の気なしに彼女の頭に手を乗せそのままゆっくりと動かした。
彼女は驚いたものの、特に振り払う事も無く満更でも無さそうだ。
『……カナヲちゃん?どうし…』
するりと、言葉が零れでる。
カ「……死なないで、下さい」
『……!』
分かっている、鬼殺隊に身を置いている身分でこの発言は無責任以外の何者でも無いと。
それでも、優しいこの人と……もう会えなくなる事がとても嫌だと感じたのだ。
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きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» テンキュー!はいごみ収集車にぶちこむぜ☆オルァ! (2020年8月8日 0時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
みかんといちご - きーねちゃんさん» はーい!ニクマン\(^-^ )ブンッ (2020年8月8日 0時) (レス) id: 085b083a26 (このIDを非表示/違反報告)
ハルサ(プロフ) - kiki11241さん» なる……予定です!(おい)すいません頑張ります! (2020年8月5日 20時) (レス) id: d6c0176894 (このIDを非表示/違反報告)
kiki11241(プロフ) - あれ本当に杏寿郎オチかな? (2020年8月5日 19時) (レス) id: 3664f0360e (このIDを非表示/違反報告)
きーねちゃん(プロフ) - みかんといちごさん» へいパース!僕今ならゴムの手袋を五万枚重ねてるんで大丈夫でーす! (2020年8月4日 22時) (レス) id: a598922371 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハルサ | 作成日時:2020年7月9日 18時