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「…好きでいいかな、と私は思うなぁ。
少しでも好きって思えたら好きでいいと思うの。好きなものがたくさんあるって素敵じゃない」


「根本的にこの疑問をへし折ってる気がするけど」


「そうかもね。でもいいでしょ、ざっくりで。
すごく好きって思えなくたって、ちょっと好きなら好きでいいと思う。

いちいち分類しなくたって、好きって言ってしまえばいいと思うの」



いつも几帳面で潔癖で、最後まできちんとやりたがる。
そんな彼女にしてはすごく適当な答えに思えたけど、好きと言ってしまえる潔さがなんだか心地よかった。



「ねぇ、生きてることは無駄じゃないって思えた?」


「それを聞くことが目的だったのかよ」



いいでしょ別に、とはぐらかす声を聞きながら、俺は考える。

停滞した日常の中で輝く、小さな幸福。
それをいくつも集めるだけの、途方もなく長い人生はきっと退屈じゃないかと思った。



「私はね、退屈でもいいと思う。
退屈だと思うから楽しいことを、幸せなことを探すんだと思うの。

だからこそ生きていることに意味があるんじゃないかなって、今日思った」


「それなら別に、無駄…なんて思えない」



希望に満ち溢れた瞳が眩しかった。
到底手の届かないような高嶺の花に見えるほどに。憧れを持ってしまうほどに、それは眩しかった。



今日はたくさん喋ったねと言う君。

家の前でまたねと手を振り笑う君。



ドアが閉まった後、日が沈みかけた空の下スマートフォンを取り出す。
メモ帳を開き、キーパッドに指を置いてゆっくりと、感じたことを少しずつ打ち込んでいく。

24文字、すぐに打ち終わった後。




濃紺と茜色の混じり合う空を見て綺麗だ、とひとり笑った。



















”恋をした。人生に幸せを探すという意味を見つけた。”






停滞した日常。
ただ空を見上げるだけのそれを、小さな幸福と呼んでもいいんじゃないかと思えた。


ただ、この気持ちを名付けるならば。
恋と呼ぶにも不確かな気持ちを、ただ幸せと名付けたかった。








__Fin.


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あおい(プロフ) - 完結後、読ませていただきました。どのお話も、少し考えさせるような、奥が深いもので、私もこういう小説を書いていきたいです。 (2020年4月28日 7時) (レス) id: 331ddf8f4c (このIDを非表示/違反報告)
りぃあ♪# - 完結おめでとうございます!どのお話も奥が深く、読んでいてとても考えさせられました。とても面白かったです。 (2020年4月18日 8時) (レス) id: 77648adcbf (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 完結おめでとうございます。どのお話もすごく心に残り、自分と重ね合って読んでいました。すごくいいお話だったと思います。 (2020年3月31日 19時) (レス) id: eb71493e70 (このIDを非表示/違反報告)
小幅 - とても面白い作品ですね!続きが楽しみです。 更新、無理しない程度に、頑張ってください! (2020年3月30日 15時) (レス) id: 62007663da (このIDを非表示/違反報告)
はんな(プロフ) - 情景描写がくわしくて、上階が本当に浮かんできます!素晴らしすぎる… (2020年3月28日 11時) (レス) id: 3170240b5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冷・結・ゆいなー・あお・ここは x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hp-rei/  
作成日時:2020年3月24日 19時

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