思い出の欠片 ページ13
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あれは、いつの頃だったかな。
「ねぇ、お姉ちゃん!」
突如、妹が楽しそうに声を上げた。
「なぁに?」
私がそう問いかければ、妹は輝くような笑顔を見せた。
「かたつむり!ほら、壁にくっついてる!」
私と繋いでいた手を離して、妹は塀にくっつくかたつむりに駆け寄っていく。
私たちの後ろを歩いていた兄が、危ねーぞ、と妹の後ろ姿に声をかけた。
「おい、公園行くんだろ?」
かたつむりに顔を近付けて、興味津々な様子で観察している妹は、一度こうなってしまえば中々その場を動かない。
その幼い子特有の頑固さは、小学校高学年である兄にとっては面倒くさいようで。
妹の手を引いて、すたすたと公園に入っていく。
後ろ髪を引かれつつあった妹は、すぐに別の興味を引くものが見つかったのか、公園の真ん中に走っていった。
その後を追いかけてみれば、妹は長靴を履いたその足で、大きな水溜まりへダイブ。
足に泥が跳ねるのも気にせず遊んでいた。
「……あれ、ママに怒られるね。」
「俺らも怒られるぞ。何で止めなかったのかって。」
頭に浮かぶママの怒り顔から目を逸らすように横を向けば、小さな小さな色とりどりの花が目に入った。
一歩間違えば簡単に踏んでしまいそうな場所にある花。
きらり、きらきら。
たっぷり水を浴びて濡れた花たちは、太陽の光に反射してまるで宝石のように輝いていた。
かわいい、きれい、すてき……!
小さい私にとって、それは宝物を見つけたような気分だった。
私が見つけたんだ。
隠れるように咲く、小さい小さいお花。
私だけの、秘密の宝物___。
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あおい(プロフ) - 完結後、読ませていただきました。どのお話も、少し考えさせるような、奥が深いもので、私もこういう小説を書いていきたいです。 (2020年4月28日 7時) (レス) id: 331ddf8f4c (このIDを非表示/違反報告)
りぃあ♪# - 完結おめでとうございます!どのお話も奥が深く、読んでいてとても考えさせられました。とても面白かったです。 (2020年4月18日 8時) (レス) id: 77648adcbf (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 完結おめでとうございます。どのお話もすごく心に残り、自分と重ね合って読んでいました。すごくいいお話だったと思います。 (2020年3月31日 19時) (レス) id: eb71493e70 (このIDを非表示/違反報告)
小幅 - とても面白い作品ですね!続きが楽しみです。 更新、無理しない程度に、頑張ってください! (2020年3月30日 15時) (レス) id: 62007663da (このIDを非表示/違反報告)
はんな(プロフ) - 情景描写がくわしくて、上階が本当に浮かんできます!素晴らしすぎる… (2020年3月28日 11時) (レス) id: 3170240b5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:冷・結・ゆいなー・あお・ここは x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hp-rei/
作成日時:2020年3月24日 19時