サッカー部の異変 ページ12
〜霧野side〜
恐る恐る、遠慮がちに話題を変えてきた星宮A。
俺はそんな星宮さんが聞きたがっていることを、何となく察していた。
すでに噂は広まっている。天馬が、南沢さんが行方不明になったという事件の話は。
天河原サッカー部にその話が届いていても、別段おかしなことではない。
貴方「雷門サッカー部の松風天馬くんと、元雷門サッカー部の南沢篤志さんが行方不明になってるって聞いて」
霧野「ああ、どちらも本当のことだ」
やはりその話かと思いつつ、正直に答える。星宮さんはあからさまにショックを受けた顔をした。
貴方「やっぱりそうなんだ。私松風くんのファンで、すごく心配で」
霧野「え、そうだったのか?」
天馬、お前こんな可愛いファンがいるぞ。別に羨ましいとかは思ってない! 断じて!
貴方「早く見つかるといいんだけど」
霧野「…………そうだな」
天馬が消えたのはあまりに突然で。
雷門サッカー部の落ち込み様は深く、みんな意気消沈していた。それだけ、天馬の存在は雷門の光だった。
あいつが来なければサッカーは……未だフィフスセクターによって支配されていただろう。
そして俺たちに追い討ちをかけるように、南沢さんが失踪。
南沢さんは天馬が行方不明になった話をいち早く聞きつけ、心配して稲妻町へやって来た。その矢先のことだった。
俺たちがそれを知った時、一番ショックを受けていたのは倉間だった。それからというもの、あいつの様子はどこかおかしい。
天馬と仲が良かった葵と信助はまだ立ち直れていないし、普段クールにすましている剣城も見るからに動揺し、心配している。
剣城といえば、あいつのお兄さんの怪我。海外の治療を受けないと治らないと言われていたのに、ある日突然完治したらしい。
奇跡だと、彼の両親や医者が喜んでいたのを覚えている。
剣城もとても嬉しそうにしていた。けれどあの時、天馬や狩屋が一瞬だけ複雑そうな表情をしたのを、俺は見逃さなかった。
剣城の悲願が叶ったのに、あの2人はなぜ一緒に喜んでやらなかったのか。
………。
俺たちの……雷門サッカー部の周りで、何かが起きている。そんな気がしてならない。
そして。
・
そのことを、『神童』……お前はなにか知っているんじゃないのか?
そんな風に疑ってしまう俺は、最低だろうか。
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作者名:サリア | 作成日時:2020年2月6日 21時