11 イート イット? ページ12
「わーい!」
何の疑いも惑いもなく、包みをビリビリ開けて、中からブラウニーを取り出し、ひょいっぱくっと食べ始めた。
唖然とする国木田を尻目に、満足げな乱歩である。
「うまーい!僕これ好き!」
「…………」
Aは。
誰かに菓子の感想を云われたのがとても久し振りだったので、どことなく緊張感が解れて行くのを感じた。
「乱歩さん、妾にもおくれよ」
「えー!しょーがないなぁ!ほら谷崎、お前にもやるよ」
「え、わ!」
ぽーいと投げられた菓子を受け止め、そのまま口に含んだ彼は。
「わ、ほんとだ。美味しい!美味しいですよ界さん!」
満面の笑みを、見せてくれた。
「………………」
本当はここで、お礼を云うべきなのか、然し勝手に起こった現象であるからして。
あと何でか、この男に、何かしら反応をしたくないからして。
無反応で向き直ったAに、
「で、何処から此処に?」
与謝野さんからの質問。
うん。
この人達は、
今日初めて喋ったけど。
信頼できる人だって、
私知ってるから。
ずっと、視てきたから。
菓子を褒められた事で、
かなり警戒心を解いてしまったAは、
「…………」
異能について、端末を用い、少し打ち明けた。
そこの資料棚から一部始終を視て、咄嗟に助けたと。
いつも視てきた人達なのに、
やっぱり、面と向かって話すのは、ドキドキする。
「ほう……異空間製作系の異能とは、久しく見てないな」
「うんうん、私もここ五、六年は見てない!この菓子とっても美味しいね!」
事件解決直後にふらふらと帰って来た太宰治も、その談話もとい取り調べの中に入っていた。
いつも通り初対面で心中に口説かれたAだが、臆することなくとても丁寧に断って。
勿論、その太宰の習性も、その他の事も知っていたから。
それからはずっと太宰を見つめているAに、
「私の顔に何かついてるかい?そんなに見つめられると、照れるなあ。
恥ずかしくて、Aちゃんを攫っちゃいそうだよ。
えへへ、そう云えば包帯、お揃いだねぇ」
顔を背ける事で、黙殺した。太宰は少し沈んだ様。それを見ただけで少しの罪悪感が生まれた次なる彼女の視線の先には、あの男がいた。
ヒョロヒョロした雰囲気で、
チャラチャラした雰囲気で、
へにゃっとしている。
然し今は、此方を申し訳なさそうな顔で見つめて来て。
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neko - 江戸川乱歩様、貴方には異能力が全く御座いません。サッパリです。 (2020年10月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - マカロニさん» マカロニ様、ご指摘ありがとうございます。早速プロローグにさせて頂きました。この様に切ない技量ですが、更新頑張りますので宜しくお願い致します! (2019年12月30日 11時) (レス) id: 51ec71086f (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。第一話のエピローグはプロローグの間違いではないでしょうか?(エピローグは終わりの時なので……)初コメントがこのような形ですみません。更新頑張って下さい。 (2019年12月30日 8時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年12月22日 22時