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中原中也  ココア ページ17

目を覚ますと、緩やかな風、そして小鳥の囀り。


「…………んん」


 広いベッドの反対側に手を伸ばしても彼は居らず、然し微かな温もりを感じた。
 そのままボーッとしていると、近付いてくる。

 誰かは、判っている。


「A……オハヨーゴザイマス」


 真上を向くと、優しい声が降ってきた。夜も朝も変わらない、愛しい声。


「…………中也」

「はい」


 持っていたマグカップをサイドテーブルに置き、ベッドの縁に座る彼。

 甘い薫り。
 幸せな香り。


「身体大丈夫、ですか?」

「君は?」

「元気です」


 へへっと、中也は笑った。が、中々起き上がらないAを見て、心配そうな声色で言ってきた。


「お、俺、力とか……強過ぎましたか?」

「大丈夫だよ」


 それに気付き、ゆったりと起き上がる。彼の膝に頭をのせ、その頬を撫でた。


「よかった」


 褒めてやると、その顔がじんわり赤くなってきた。可愛い。


「ねえ、それなーに?」


 マグカップを指すと、どうぞと取ってくれる。歳下だけど、上司。良い子良い子。

 受け取ると、あったかくて、ほんわかした。


「あ、マシュマロ浮いてる」

「はいっ」


 ココアの波にじんわり溶けていく白。
 小さな息で冷まし、口を付けた。

 甘い。
 優しい。
 柔らかい。


 そう、それはまるで。


「あれ、私このココア……飲んだ事、ある……?」

「……」


 何故か、込み上げてくる懐かしさ。

 昔一度だけ飲んだ事のある、深いココアの味がする。
 
 凄く美味しかったから、また飲みたいって思っていたけど、時が経つのが早いのか、何処で飲んだかも誰と飲んだかも、段々忘れて行った味なのに。


「……その」


 マグカップを置いた中也は、昨晩よりも真っ赤な顔で、呟く様に、噛み締める様に。


「…………初めて会合で会った時……美味いって言ってたンで――」

「………………」


 ああそうか、あの時か。
 そんな、かなり昔の事を。

 君はまだ、組織に入り立てだったのに。


「覚えてくれて、いたんだね」

「そりゃそうですよ」


 そりゃァ。
 あの時、そのココアを飲んで零れた笑顔に、俺は――――


 まるで重力が無くなったみたいな、

 喜びと嬉しさ、
 幸せな気持ちがこんなに広がるのは、


 ココアのおかげ?


 それとも。


 甘い。
 優しい。
 柔らかい。


 そう、それはまるで、


 貴方の様な――。

中原中也  シュトーレン【月瀬様Req.】→←中原中也  タピオカ【ウミソラ様Req.】



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 短編集 , 甘い   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 体の90%がラムネさん» 体の90%がラムネ様、ご感想ありがとうございます!また三期でお待ちしております、宜しくお願い致します!更新頑張ってください! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 闇川幽鬼様、単品で織田作登場です!ありがとうございます! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
体の90%がラムネ - 初コメです!めっちゃ良きでした!!突然ですが、リクエストしたいですが…。ダメでしたね。すいません!また募集している時にいきます!更新待ってます!(自分も更新しろよと思う今日この頃) (2019年12月21日 13時) (レス) id: 8dd45af6f4 (このIDを非表示/違反報告)
闇川幽鬼 - 作之助様登場!!(*゚∀゚*)嬉しいです!(*^_^*) (2019年12月21日 0時) (レス) id: 56867ea8da (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 月瀬さん» 月瀬様、リクエストありがとうございます!只今からのリクエストは無効とします。ゆっくりで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します! (2019年12月15日 11時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月25日 17時

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