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中島敦   チーズケーキ ページ2

「あれ、Aちゃん?」

「おや敦君」

「家…この辺りだったっけ?」

「や、もっと北の方」


 人だかりの中でも見つけられた彼女は、今日は何故か一際、輝いて見えた。

 休日に、会えたからだろうか?


「これ…なんの行列?」

「ん?知らない?」


 Aが指差す看板を見れば、それは今流行りの、話題のスイーツ。


「ああ!鏡花ちゃんも気になってた奴…良い匂いだね」


 焼き上がった生地の薫りの中。
 外側に並んでいるからか、敦はAの隣にぴたりとくっついて会話を続けてくる。

 まるで一緒に、並んでいるみたい。


 頬に手を当て、Aは顔を緩めた。


「スフレ系の、口に入れた瞬間しゅわっと溶けてくチーズケーキなんだって。是非食べないとっ」

「溶け、る?」

「あと生地も凄いぷるぷるらしい!」

「あ!前にテレビで観た……あれ、ここなんだ!」


 かなりテンションハイな敦。
 甘い物が好きと言うより、食への執念が人一倍強いのか。


 そしてAの順番は曲がり角に入り、彼女と彼の間には、人の壁が出来ていく。


「じゃあね敦君。喋ってくれてありがと」

「あ、うん…じゃあ…」


 別れの挨拶をすると、先程とは打って変わってクールダウンした敦。

 どうしたのかしらと、Aは列に埋もれて行った。







「買えた……ぎりぎり買えた…!」


 目の前でふるふると揺れながら、その色艶美しいチーズケーキは焼き立てで。

 ワンホール入った箱を提げて、漸く人だかりを抜けたA。


「あ」


 の、目線の先には。


「あ……」


 樹にもたれ、後ろで手を組み、そわそわしている中島敦がいた。

 女子かよ。


「敦君まだいたの?」

「あ、Aちゃん…買えたんだね」


 ホッとした顔。自分の事の様に、嬉しそう。


「待ってたら、また、会えるかなって。その……」


 夕焼け空の様な真っ赤な顔で。


「まだ君と、喋りたい……から」


 そんなことで?
 Aは、ふっと笑った。


「はあ、そんなに此のチーズケーキ食べたいかあ、しょうがないなあ」

「え、あ、違っ」


 彼の腕を取り、溜息をつきながらやれやれと、然し太陽の様な明るい笑顔で。


「ほら、敦君ん家行くよー。鏡花ちゃんも気になってたんでしょー?」

「あ、う」

「きりきり歩く!」

「は、はい!箱、持ちます!」


 笑い声は反響し、

 温かい、甘い香りの中で、


 2つの影は、
 一つになっていく――

中島敦   小籠包→←中島敦   もんじゃ(学スト)【ウミソラ様Req.】



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 短編集 , 甘い   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 体の90%がラムネさん» 体の90%がラムネ様、ご感想ありがとうございます!また三期でお待ちしております、宜しくお願い致します!更新頑張ってください! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 闇川幽鬼さん» 闇川幽鬼様、単品で織田作登場です!ありがとうございます! (2019年12月21日 23時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
体の90%がラムネ - 初コメです!めっちゃ良きでした!!突然ですが、リクエストしたいですが…。ダメでしたね。すいません!また募集している時にいきます!更新待ってます!(自分も更新しろよと思う今日この頃) (2019年12月21日 13時) (レス) id: 8dd45af6f4 (このIDを非表示/違反報告)
闇川幽鬼 - 作之助様登場!!(*゚∀゚*)嬉しいです!(*^_^*) (2019年12月21日 0時) (レス) id: 56867ea8da (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 月瀬さん» 月瀬様、リクエストありがとうございます!只今からのリクエストは無効とします。ゆっくりで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します! (2019年12月15日 11時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月25日 17時

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