45 徒弟 ページ46
ルイーザ・メイ・オルコットは、漸く出来上がった作戦書を持ち部屋を出た瞬間凄い速さで走り回っている組合員にぶつかられ、その拍子でその紙の束をバサバサとばら撒いてしまった。
「あ……あぁ」
せめて踏まれないようにと、あわあわと手で拾い集める。
緊急事態だからか、徒弟であるにも関わらず、誰も彼女には目もくれない。
と。
細長く小さな手が、1枚の用紙を拾った。
顔を上げると、それは日本の女の子――フィッツジェラルド様が誘拐してきたポートマフィアの少女。
まあ、その作戦も、オルコットが考えたものだが。
「大丈夫ですか? はい、どうぞ」
優しい笑顔で手渡される。
「ぁ……ぇっ、と……」
人と話をするのはとても苦手だ。
いつも、なんて言えばいいか解っているのに、肝心な時にはなにも言えない。
無言で受け取ると、少女は他の用紙も拾い始めた。
虎人の少年が逃げ出した時用の作戦書だが、異国の言葉で書かれているため、筧Aには判らない。
先程事が起こったばかりなのに、もう作戦書を書き終えているのが、オルコットの異能だから。
マーク・トウェインが、標的を狙撃することも既に入れ込んでいる。
当のAは、またも呑気に、
「英語……? かっこいい……」
口に出してしまうほど、筆記体に見惚れていた。
「はい! これで全部ですかね?」
「ぁ、ぅ……ぁり、ありがとう…ご、ざいます」
この子、攫われている身にしては身軽に生きているなと、眼鏡のズレを直しながらオルコットは思った。
そして、優しい、とも。
「凄い量ですね! 長編小説か何かですか?」
この状況で何故そういう思考に陥る、と思いながら、
「ぃぇ……これ……フィッツジェラルド様に…お持ちしないと……」
「フィッツジェラルドさん」
ほぼ呟きの様なオルコットの言葉に反応するA。
「あの……フィッツジェラルドさんって、どうして、その、本が欲しいんですか……? それに、貴女は」
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午(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年5月14日 21時