04 真っ白な部屋 ページ5
「だから元気、出してください!」
精一杯微笑んだ。
樋口さんは吃驚した顔で、目に涙を溜めながら、こちらを見つめた。
「…………」
手を握りしめたまま、またも沈黙。
「……あ、ありがとうございます。分かりました」
樋口さんは涙を拭い、何か決断した表情になり、云った。
「全責任は私が取りますので、宜しくお願い致します」
「はい!喜んで!」
責任ってなんだろう。
というかいい加減即答するこの癖を直したい。
この癖、歌で治らないかな……まあ、異能を使っても、自分の傷は治せないんだけどね。
これだから、会社クビになったのだろうか。
そうこうしているうちに。
車が止まった。
降りた先はどこかの建物の中で、どれだけ厳重な所に連れてこられたんだと思った。
長い廊下を歩く。私のヒールの音しか聞こえない。前に樋口さん、私の両隣にも一緒に歩いている人たちがいるのに。
うわあ、この人達凄いのでは……うん、何があっても大人しくしていよう。
そう謎の決意をしたとき、樋口さんの足が止まる。
一つの部屋の前。
中に入る。
真っ白な部屋だった。
壁も、天井も、床も、そしてガラスの向こうに、誰かが寝ている。沢山の管に繋がれ、全身に包帯を巻いて、眠り続けているという、
「この方が、芥川さん……」
「はい」
凄い大怪我……今までで、断トツかもしれない。
どれほどかかるか分からないけど。
でも。
「で、では、頑張らせて頂きます」
「はい、此方もご用意しましたので、他に必要なものがあれば」
樋口さんはハーブティーを持ってきてくれた。基本的に腹式呼吸とこれがあれば、喉を潰さず、長時間歌い続ける事ができる。
「え、ええっと。なんか私、長く歌い続けると、トランス状態?になるらしいんで、止める時は、叩くなり殴るなりしてください」
「は、はぁ……」
よし。
では行きますか。
大好きな歌を歌って、
誰かを救う。
私でも出来るかもしれないこと、頑張ろう!
その真っ白な病室の、ガラスの向こうにいる何人かの医者と樋口さんに背を向け、眼前の芥川さんに向かって、
私は息を吸い込んだ。
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午(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:午 | 作成日時:2019年5月14日 21時