03 黒塗り、涙 ページ4
筧Aは思考する。
何故、のこのこと、こんな所まで来たのかと。
あの路地裏で、
「ご同行願えますか」
と言われ、
「え、あ、はい」
と二つ返事で答えると、
「ありがとうございます。私は樋口と申します」
と自己紹介を終えた樋口さんはどこかに電話を掛け始めた。
すると、1台の黒塗りの車が着いたかと思えば、乗るよう言われる。砂を払い、乗り込むと、樋口さんも隣に座った。
沈黙。
車は動き出したが、運転席は見えず、窓からの景色も見えない。
生まれてから十一の頃まで過ごしたヨコハマを離れ、そして10年振りに帰ってきたばかりの私には、どこに向かっているのかまるで検討がつかなかった。
あれ、これやばいんじゃ。
ようやく思考が冷静になった自分を褒めたい。いや、もう車に乗り込んだ時点で駄目である。
まあ、わかっている。
何故ほいほいと二つ返事でついてきてしまったか。
先程、会社を解雇になった。
そのショックで思考回路がふやふやになってしまったのだ。
と、言うことにしておこうと自分に言い訳し、
人身売買とかだったらどうしようとか、昔習った体術で切り抜けられるかなとか考えていると、
「……あの、突然すみませんでした」
樋口さんが、重そうな雰囲気で口を開いた。
「え、いえいえ、暇でしたから!」
咄嗟に答えたが、ちょっとグサグサくる。あぁ、明日からどうしようかしら、と考えていると、
「どうしても、お救いして頂きたい方がいるんです」
樋口さんの方へ視線を向けた。
「……っ、私がもっと、しっかり、していればよかった、んですけど、っ、どうしても」
泣き始めた……?!
「うぅっ……どうして私は、ぐすっ、こんな」
めっちゃ泣き始めた!
「わ、わあわあ大丈夫ですよ! さっきも結構上手く行きましたし、頑張りますので! 泣かないでください!」
気づけば樋口さんの手を取り、励ましていた、いや、懇願していた。
やはり悲しい顔は苦手だ。
樋口さん可愛いのだから、笑っていてほしい!
「その人が治るまで、私頑張りますので! 一日中でも歌いますとも! よろしくお願い致します!」
凄い啖呵を切ってしまった。
まあ、昔十時間くらいかけて治癒したこともあるし、大丈夫だろう!
こうなったら行けるところまで行ってしまえ!
800人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
午(プロフ) - リアさん» リア様、素敵なご感想とご指摘をありがとうございました!全然気付かなかったのでありがたいです。近いうちに修正します!またいつでも遊びに来てくださいませ! (2021年2月2日 23時) (レス) id: 4dcd31a7db (このIDを非表示/違反報告)
リア - 少し高圧的でしたかね?不快でしたら申し訳ない…更新頑張ってください!(唐突〜 無理矢理とか言うんじゃねぇ!) (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
リア - 凄く面白いですね!すぐ読み進めてしまいました!少し気になったのですが、34の所で夢主が芥川さんのことを龍之介さんではなく、芥川さんと言っていたのですが、これは意図的なものなのでしょうか?もし意図的にそうしているなら、すみませんが訂正されては如何ですか? (2021年1月31日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
午(プロフ) - 徒花さん» 徒花様、ご感想ありがとうございます!頑張ります! (2019年6月30日 0時) (レス) id: b0368434d0 (このIDを非表示/違反報告)
徒花 - この作品初めて見ましたが面白かったです!頑張ってください (2019年6月29日 19時) (レス) id: 5d280f12f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:午 | 作成日時:2019年5月14日 21時