コーヒーの染み___2 ページ2
「Aちゃん。もうすぐお店閉まるから切りつけてね。」
そっと声のする方を見ると申し訳なさそうな顔の店長がそこに立っていた。「わかりました。」というと店長は「ごめんね」っと笑って立ち去った。
この店は20:00に営業終了だ。実はここでバイトをしているのだが時間を見て無さすぎて忘れていた。
30分前に彼は出ていった。
「……すき」
ぼそっと言った声はきっと彼には届いていない。
そもそも、ここにいないわけだから。
荷物をまとめ、駅に向かった。
駅のホームに着き、暗記用の参考書と赤シートを出した。
参考書には赤のマーカーとカッコ抜きされた所にはピンクのペンで書かれた文字がある。
赤シートの場合赤のマーカーの方が見え、ピンクのペンは消える。
決してその場から消える訳では無い。正確に言えば色が重なって、見えなくなると言うべきなのかもしれない。
逆に緑のシートを当てれば、ピンクのペンが見えるが、赤のマーカー部分は見えなくなる。
一石二鳥という訳だ。
1ページを見終わった頃、電車がやってきた。
ふと、空を見上げるとほとんどいつもと変わらない夜空が広がっていた。
少し変わるとしたら、今日は少し雲が多く、月は更け待ち月だったということぐらいだ。
電車に乗り込み、空いている2人席に座り、参考書に目を落とした。
最寄りの駅まで急行で5駅。
それまでにこの行まで覚えようと、参考書を読み返した。
私はガリ勉では無い。
どちらかと言うと、勉強は苦手な方だ。
だからこそ、近日に迫りつつある入試に対し懸命である。
目標ページに達し、鞄に参考書を入れた時だ。
「お隣いいですか」
反射的に「どうぞ」と答えた
返事をした後にその人をぱっと見るとそれは間違えることも無い。
時々カフェマキアートを頼むあの彼だ。
前髪、変じゃないかな……髪の毛を整えながらそう思った。
「君、よく隣町のカフェで勉強しているよね」
気がついていないと思っていたから、彼のその言葉に驚いた。
「はい、センター入試近いので…」
そういうとクスッと笑った。
「センター近いって言うけどまだ8月だけど？」
「私、そんなに頭よくなくって、進路担当にこのままだと受からないって言われたので必死で」
すると「なるほどね」っと彼は笑った。
こんなふうに話せるなんて夢のようだ
緊張で心臓が弾けそう…
「ねぇ、名前なんて言うの？」
「Aです」
「いい名前だね」
彼はそういい停車駅で下車していった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アヤミ | 作者ホームページ：
作成日時：2019年5月18日 23時
