刻まれた証*3 ページ45
振り切った刃が、呼吸からの反動に耐え切れず砕け散る。
不完全な形のものが、こんなにも脆いということを忘れていた。
私も、しくじれば一瞬にして無になるだろう。
それから、今の一撃には、私以外の誰かの力が働いていた。
この気配は……兄様方の! しかし何故……?!
素早く辺りを見回すと、透き通って見える肉の塊の中から件の鬼が姿を現すのと共に、それまで見えていなかった所から兄様方の気配が入ってくるのがわかった。
丸腰の私は直ちにその場を離れ、あの謎の空間から解放された事を確認した。
日がすっかり暮れ落ちている。
決して目は逸らさない。彼等の戦いを見守らなければならない。
それが、今の私に出来る事だから。
瞬きのひとつも許せぬ程に張り詰めている。
……兄様方の一太刀一太刀を、見逃してはならぬ!
しかし男は、兄様方に完全に囲まれているというのに何処か余裕そうな表情に見える。
あの鬼、私の中にある何かで私を操るつもりか!?
そうだとしても抗うまでよ!!
兄様方の共闘は初めてかの様に思えるが……。
まるで互いの思考を読み取っているかの如き連携技に舌を巻く。
流れを途切れさせる事は無く、異なる呼吸同士でも隙を与えない。
男が身体から延ばす管の様な物を薙ぎ払い、みるみるうちに全身の肉を斬り刻んでいく。
……まずい、もっと距離を取らなければ………!!
奴の血肉が弾ける……!!
走り去る私の脚に、何かが絡み付いた。
振り向くと、一瞬にして私の後ろを迫っていた兄様の刀が何かを捉えた。
無惨の管か!? 先端が尖っている……!
まさかこれで、血を?!
「させぬわッ!!」
『月の呼吸、参ノ型……厭忌月・銷り!!』
私ごと斬るのか……!
兄様の決断の潔さに思わず興奮した。
……いや、目を凝らすと私のあちこちに沢山の肉片がある。
これをひとつ残らず斬るのなら、私の頸など庇ってはいられまい……!
覚悟はとうに決めている。
鬼を滅ぼせるのなら、迷う事など何も無い。
最期の視界に見えたのは、弾け飛ぶ無数の肉片の中のひとつ、最も重く硬いもの。
それは兄様方の死角の方へと飛んでいた。
70人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤葛(プロフ) - レモンティーさん» ありがとうございます! 自粛開けもちまちまと更新していきますのでこれからもどうぞよろしくお願いします(*^^*) (2020年5月30日 21時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー - この作品大好きです!!なんせ緑壱さんが推しなもので…(´∀`*)更新頑張って下さい!! (2020年5月30日 21時) (レス) id: 0820e3db89 (このIDを非表示/違反報告)
藤葛(プロフ) - 澪さん» わああ……ありがとうございます!めちゃめちゃ嬉しいです!!とても励みになります……頑張りますのでどうぞよろしくお願いします!! (2020年5月20日 7時) (レス) id: 3bacfd04fc (このIDを非表示/違反報告)
澪 - すごく好きです継国兄弟…こういう設定のもの大好きです…いいものを見させていただきました…ありがとうございます…!!頑張ってください!応援してます! (2020年5月20日 3時) (レス) id: c921836d0d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藤葛 | 作成日時:2020年5月17日 4時