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「味噌チャーシュー、ただいまお持ちしますねー」








瞬きひとつをするだけで

あっさり向けられる背中に








声も




息も








出ないまま








.








白いTシャツ1枚の背中は
くっきりと姿を写して









滲む肩甲骨の膨らみとか


布の余る腰回りとか









逃すまいと焼き付ける瞳は
瞬きすら許してくれない









「知り合い?」









少しひそめた志保さんの声で
ようやく引き戻される視線









……そうだ









彼の名前を呼んだのは

私じゃなくて岸くんなんだ









「高校ん時の友達……だと思うんだけど」


「でもノーリアクションだったね、あの人」


「だよな。えー、でもそっくり。マジで」








そう言って彷徨い浮かぶ瞳は
きっと彼の姿を探す








……高校の、友達









「絶対紫耀だと思うんだけどなぁ」


「また聞いてみれば?」


「えぇぇどうしよ、マジで違ったらキツくね?」









絶対そうだよ








あれはたしかに









……紫耀くん、だ









限界を超えた鼓動のせいで









「ね、岸くん」








吐き出すように

声が洩れて









「その人の苗字、さ。……平野、だったりする?」


「え?おま、知ってんの?」









見開かれた岸くんの瞳へ


真っ直ぐに私が映れば









「味噌チャーシュー、お待たせしましたー」








まるで

なんにもなかったみたいに







「熱いので気をつけてお召し上がりくださーい」







コトリ置かれた揺れる湯気







「あー、行っちった」







また捕らえられてしまう意識は
少しも回る気配はなく








「声かけてみればよかったのに」


「いやぁムリだって、」








暑いのか肩まで上げた袖に
晒された盛り上がる二の腕が





釘付けた眼を離さなくて








「Aー?」


「Aちゃーん?」


「あ、はい」







覗き込む2人の瞳で

戻る時間が喉を締める








「とりあえず、食べよっか?」


「だな」







伸びちゃうよ、おどける志保さんで
彼のしかめっ面が浮かぶから


口元へ箸を押し込めば







「……美味しい」







意外としつこさのない香りが
フワリ喉へと拡がって






「ほんと、美味しい」


「だろ?」






誇らしく弾む岸くんの声に

志保さんとふたり肩をすくめた

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ふとん(プロフ) - はるかさん» はるかさん、ありがとうございます!ようやく折り返しと言えるところまできました…最後まで頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです! (2017年9月21日 23時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ここにきてこんなに切ない展開ってさすがです…続きがすごく気になります!! (2017年9月20日 2時) (レス) id: 66715550c8 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん(プロフ) - つかささん» つかささん、ありがとうございます!最後まで自分の思い描いた世界を表現できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2017年8月31日 9時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - この作品を読んでいるとすごく不思議な感覚になります。更新楽しみにしてます。 (2017年8月28日 10時) (レス) id: ad87999c23 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 紫耀ちゃんが、いつ出てくるか楽しみです! (2016年12月19日 8時) (レス) id: a7ce410caa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふとん | 作成日時:2016年12月18日 21時

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