17 ページ17
.
「んあー、旨かった！」
ひとりだけ大盛りのくせに
1番はじめに食べ終わり
ガブリ水を流し込む岸くんは
ふう、とイスにもたれかかって
「で。Aと紫耀はどういう関係なわけ？」
私が食べ終わるや否や直ぐに
前のめりに頬杖をつく
「……、関係って」
喉で絡まりかける水に
間の抜けた声が出されれば
むせかけた胸元が痛い
.
関係、なんて
大袈裟な
.
今日、偶然に、見つけなかったら
2度と会うはずのない人で
.
「……1日だけ、バイト一緒だったの」
「え、昨日んとこ？」
「うん。初日だけね」
.
こうやって言葉に変えれば
あまりに
他人行儀な距離
「おまえの言う紫耀ってさ、」
瞬いた岸くんの目も
きょとんとした志保さんの目も
眼に写ってはいるんだけど
意識はずっと、壁の向こう
「こん中にいたりする？」
手渡された画面の中
言われるがままに覗いてみれば
ブレザー姿の男の子たちが
黒板の前を陣取って
教卓の上に座ってみたり
誰かの目を隠してみたり
その着崩した制服の中で
一点に止められる視線
はにかんだ岸くんの肩に
まくり上げた袖を乗っけて
ゆるく傾くネクタイの手前で
ピースサインを裏返して
「うん、いる」
黒髪のあどけない紫耀くんが
くしゃり瞳を細めていた
……似合うじゃん、黒髪
もう一度視線を飛ばせば
色素の薄いその毛先が
クルリ柔らかく跳ねていて
騒めきはじめた視界の端に
スラリ覗く志保さんの腕
「すいません、ギョウザひとつ」
かしこまりー、と声が響くから
「マジで？」
岸くんは抜けた声を出し
「優太ならまだいけるでしょ？」
「え、俺！？」
そのまま呆気にとられるのを見て
志保さんは片目を瞑って
「作戦会議がいりそうじゃない」
紫耀くんとやらを整理しなきゃ、と
水を口に含んでみせる
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1504人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふとん(プロフ) - はるかさん» はるかさん、ありがとうございます！ようやく折り返しと言えるところまできました…最後まで頑張りますので、お付き合いいただければ幸いです！ (2017年9月21日 23時) (
レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - ここにきてこんなに切ない展開ってさすがです…続きがすごく気になります！！ (2017年9月20日 2時) (レス) id: 66715550c8 (このIDを非表示/違反報告)
ふとん(プロフ) - つかささん» つかささん、ありがとうございます！最後まで自分の思い描いた世界を表現できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。 (2017年8月31日 9時) (レス) id: 1df4f5ed05 (このIDを非表示/違反報告)
つかさ(プロフ) - この作品を読んでいるとすごく不思議な感覚になります。更新楽しみにしてます。 (2017年8月28日 10時) (レス) id: ad87999c23 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 紫耀ちゃんが、いつ出てくるか楽しみです！ (2016年12月19日 8時) (レス) id: a7ce410caa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふとん
| 作成日時：2016年12月18日 21時
