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見れば見る程に美しい容姿をした女性だなあと、目の前に佇む女性を見てAは思った。玉壺さんや、あの六つ目の方の様に異形の姿の方もいらっしゃるけれど、無惨様や彼女みたく美しい鬼も存外多いのかしら。


「先日はごめんなさいね」

「え?」

「貴女を傷付けた事、後悔しているの」


しゃらりと堕姫さんの上等な髪飾りが音を立てて揺れる。先日の事などもうすっかり頭から抜け落ちていたし、別に気に止めても居なかったけれどまさか態々面と向かって謝罪されるだなんて思っても居なかった。


「面を上げて下さい」


彼女が私を面白く思わないのは当然の事だ。
思うに堕姫さんは無惨様に心酔している、そうでなかったにしても他人に興味関心の無い彼が認める部下であると言うことは、かなりの年月を共に過ごしていたのだと思う。
鬼と人は姿かたちは似ていても全く事なる生き物だ。私達が豚や牛の命をいただくように、鬼は人間を主食とする。
幾ら姿が似ていても、鬼が人を傍に置いておくだなんて不自然、異常な事だろう。
人を食べより強くなれと部下に命じた立場である彼が、人間のか弱い小娘を傍に置いているだなんて面白い訳が無いのだ。

「謝らなければいけないのは私の方です」

「.....何故?」

「なんの覚悟もないのに、貴女方の世界に介入してしまってごめんなさい」


中途半端である事は私自身が一番自覚していた。
人の世戻り彼に二度と会えない生活を送る覚悟も、鬼になる覚悟も無いのに、無惨様と一緒に居たい気持ちは止められない。
私は全てを望みすぎている。


「貴女が思っている程生易しい世界じゃないわよ、きっと後悔する。人の世でぬくぬくと育ってきた貴女はいつか潰れてしまうわ」

「う...」

「あれ程までにあの方の寵愛を受けてなお人である事を捨てきれていないじゃない」

「それでも、無惨様と一緒に居たいんです」

そう、と一言堕姫さんは呟いた。
大きな瞳を伏せた彼女の美しい唇から深い溜息が漏れる。怒気と落胆と、その他諸々の感情の籠ったそれはそれは深い溜息である。


「そこまで言うのならもう何も言わないわ、意地悪してごめんなさいね」

「堕姫さん...」

「さ!仲直りしましょ、店の客から頂いた落雁があるの、貴女と私の仲直りのしるしよ」

宝石のような美しい笑みを浮かべた堕姫さんが、柔らかな茶紙で包まれた落雁を私に差し出してくれた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼舞辻無惨 , 上弦の鬼   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時

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