27 ページ30
「無惨様」
「どうした?堕姫」
此処は吉原。
男と女の数だけ物語が出来る、金と欲が混じり合う街。
無惨の膝に身体を預ける堕姫と呼ばれた女は、その美しい顔を不満げに歪めていた。
「貴方様が人間の娘をお傍において居ると言うお話を小耳に挟んだのですが、それは本当でしょうか?」
「...ああ、本当だ」
堕姫からの突然の発言に、一瞬無惨の顔色が変わったが、すぐに元通り、穏やかな顔へと戻った。
「何故です!?人間なんて弱くて醜くて...貴方の傍に置いておく価値などありませんわ!!」
「堕姫」
ひんやりと冷たい声で名前を呼ばれれば、すぐに堕姫の身体が強ばる。
表情からは読み取れないが、余り機嫌を損ねてはいけないと本能で感じた堕姫はそれ以上何も言うことは無かった。
「お前は会う度に強くなる、私の為に頑張っているお前を私はとても可愛く思うよ」
「はっ、ありがたきお言葉...これからも精進して参ります」
「良い子だ」
「!もう帰られるのですか?」
すっと立ち上がる男を見て堕姫はそう声をかけた、すると無惨は口元に笑みを浮かべて
「お前の言うその人間の娘は少々厄介でな、目を離した隙にどこかへいってしまうんだ」
そう一言呟き姿を消した。
「クソっ!なんて腹立たしいの!」
力強く壁を殴る堕姫は、端正な顔に怒りを滲ませた。
どこかへ行ってしまうからなんだと言うの?
それなら鬼にし己の支配下に置いてしまえばいいのに。
でもそれをしないという事は、彼は...無惨様は無意識のうちに彼女になんらかの特別な感情を抱いていると言うこと。
「...見てなさいよ」
ーー
「鳴女、Aは?」
「つい先程おやすみになられました」
「そうか」
彼女の部屋は少々入り組んだところにある。
それは、無限城に棲む鬼達に稀血である彼女を危険に晒させたくないという鳴女の配慮と、簡単に逃げ出さないようにという無惨の考えのもとだ。
無惨が天蓋をめくれば、規則正しい穏やかな寝息をたて眠るAの姿があった。
陶器のように滑らかな肌に触れれば、一瞬彼女の身体がぴくりと動いたが、どうやら目は覚ましていないらしい。
何故人間を傍に置いておくのか、と言う堕姫の言葉がふと無惨の頭の中に浮かんだ。
確かに人間は脆く弱い、傍に置いておく意味など皆無だ、稀血持つ貴重な者だからという理由なら尚更若いうちに食べてしまうのが得策だというのに。
無惨は、自分がどうしたいのか分からなかった。
789人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時