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するりと鋭利な黄金の扇を出した童磨さんは、私の顔を見て再度にこりと笑みを浮かべた。
何のつもりなんだろう、そう思った刹那ーーー。
「っん.....!!!」
素早く伸びてきた童磨さんの片手が、私の鼻と口を塞いだ。
突然の事に驚いた私は、目を大きく見開き彼を見据える。
「すぐ終わるから待ってね、あ、息吸っちゃダメだよ?肺胞が壊死しちゃうから」
サラリと恐ろしい事を言う童磨さんは、先程買った花を1輪取り出した。
「じゃあ目を瞑って、俺がいいって言うまで開けちゃダメだよ」
静かに目を閉じる。
何をするつもりなんだろう、そう思っていると物凄い冷気を一瞬身体に感じた。と、同時に口元を抑えていた手が外れた。
「はい、開けていいよ」
「!!!凄い....綺麗....」
童磨の手には氷に閉じこめられた芍薬の花があった。
月光に照らされ輝くそれに、無意識のうちにAの手が伸びる。
「花の部分は触らないでおくれよ、君の指まで凍ってしまうからね」
何度か首を縦に振った彼女は、童磨の手から受け取った氷漬けの花を嬉しそうに見つめた。
「どうしてこんな事をして下さるんですか?」
「悲しんでいる人を救ってあげるのが俺の役目だからね」
「.....ありがとうございます、童磨さん」
照れくさそうにAが笑みを浮かべる。
返すように笑みを返した童磨は
(あー、これはマズいやつだなあ)
そんな事を頭の片隅で思った。
この様に純な娘、愛おしいと思わない男は居ないだろう。それに、稀血を持つ者特有のこの甘い香り。
一日中だなんてとても一緒に居られない。
ぐちゃぐちゃに汚してやりたい衝動と、喰ってやりたい衝動に支配されてとてもじゃないが気が気じゃなくなる。
童磨はなんとなく、自分の主が彼女から距離を置く理由が分かったような気がした。
「さあ、そろそろ帰らなければね、あの方も琵琶の君も心配しているよ」
「...月彦さんは、きっと心配なんてしてません。でも....」
でも、鳴女さんに心配をかける訳にはいけない。
帰らなきゃ、どんな顔をして月彦さんを見たらいいか分からないけれど。
「童磨さんのおかげで元気が出ました、だから私、帰ります」
「それはよかった」
ぐっと彼の手を握り頭を下げ、別れの挨拶をしかけた瞬間、景色が変わった。
「童磨、これはいったいどういう事だ?」
頭上から聞こえたその声に、体が強ばるのを確かに感じた。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時