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からかわれた事実に腹を立てたAは勢い良くベットから飛び起きようとする、が、月彦に腕を掴まれそれは阻止されてしまう。
「行くな、此処にいろ」
低く、色気を孕んだ声でそう言われてしまえば、従わずにはいられない。
自分の意思の弱さに落胆しつつも、隙だけは見せぬようベッドの縁に腰を下ろし、少し距離を保った状態でAは落ち着きを見せた。
「随分と警戒されたものだな」
「当たり前でしょう」
「とって喰らうつもりがあるのならばとっくにお前は私の胃の中だ、良いからこちらへ来い」
確かにその通りだと思った。
彼にとって私に手をかけて殺め喰らう事など赤子の手をひねるのと同じくらい容易い事の筈だ。
それよりもこれ以上意地を張って、童磨さんのように腕を吹き飛ばされては堪らない。
二度と生えてこないどころか出血多量で即死だろう。
........そう考えれば、こうするのが1番適当だろうなあ。
「良い子だ」
「子供扱いするのはお辞め下さい」
「ほう、対等に見て欲しいと?」
妖しく月彦さんの目が細められる。
ぶんぶんと首を振れば、彼はまた私を小馬鹿にするようにして笑って見せた。
「千年も生き長らえている私にしてみれば、お前は赤子と変わらないよ、A」
「!千年......!?」
「おしゃべりが過ぎたな、お前ももう少し休め」
休めと言われても、気が休まるはずがない。
先程の言葉を最後に、月彦さんはもう何も語ることは無かった。
(千年か.......)
そんな途方もない時間を、彼はどのようにして生きてきたのだろう。
心から信用出来る者は、愛する者は....居たんだろうか?
月彦さんの、童磨さんを見据える目は、とても冷たかった。あれは心から彼を信用して居る訳では無い証拠だ。
もし、気を許せる相手が居ないのだとすれば、それはとても悲しくて、寂しいことだと思った。
「綺麗な顔」
すっかり意識を手放し、規則正しい寝息をたてる月彦さんの髪を掻き分けそっと頬に口付ける。
深入りすべき事では無いのは分かっていた。
人を喰らう、私とは全く異なる者。
交わる事がない者、なのに
もっと、彼のことを知りたいと思った。
(いつか分かる日が来るのかしら)
そう思いながら、Aは静かに意識を闇へと手放した。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時