12 ページ13
すると突然えも言えぬ切なさに襲われた。
嗚呼、やはり私はこの方のことが好きなんだなあ。
人を喰らう鬼だとしても、軽々しく部下の命を奪う様な人でも、一度この様な気持ちを抱いてしまっては、簡単に無かったことになど出来る筈がない。
だから尚更悲しかった。
「まだ首筋は痛むか」
自分でやった癖に、よく言うーーー。
心の中で悪態をつきつつ私は、一切月彦さんと目を合わせることなく首を横に振った。
「ならなぜ故涙を流す?」
「放っておいて下さい」
そうよ、放っておいて。
私は、浅はかで愚かな女だから
勘違いしてしまう。
期待してしまう。
頬が冷たい、流れ落ちた涙がシーツに小さな染みをひとつ作った。
「....言った所で、貴方は理解してくれないのでしょう、目に見えているもの」
静かに涙を拭いそう言えば、それ以降月彦さんは私に問いかけてくる事は無かった。
ぐっ
「......なんですか?」
ベットで寝ている私の身体を少し強めに押した月彦さんを訝しげに見上げる。
「もう少し詰めろ」
どういうつもりなのだろうか、と思いつつもベットの端の方に身体を寄せれば、ジャケットを脱ぎ捨て月彦さんはベットに腰を下ろした。
ギシリ、と軋むその音がやけに生々しく感じる。
「な.....にをする....おつもりですか....?」
男がシーツに手をかけた。
「......さあ?なんだろうな」
不気味に男が微笑む。
ーーーーまさか、まさか!
考えを巡らせるAの身体が強ばる。
そんな様子をすぐに察した男は冷たい指先でそっとその頬に触れた。
「い、いけません月彦さん....!婚姻前の男女がこんな...!はしたない事をしては...!」
こんなのは人間の道理だ、鬼には関係の無いことだろう。
身構える様にAはぎゅっと目を閉じる。
ーーーーーーと
ばさっ
「......................え?」
「疲れた、少し眠る」
平然と私の横に寝転んだ月彦さんはあっけらかんとそう答えた。
すっかり拍子抜けしてしまったAはポカンとした表情で月彦の顔を見つめる。
そんな彼女の顔を見返す男は意地悪そうな笑みを浮かべ
「何を拍子抜けした顔をしている、期待が外れたか?」
そう呟いた。
かーーーっとAの頬が紅潮していく。
(なんて男なの....!)
「ああそうですか!どうぞごゆっくりおやすみ下さいませ!!」
789人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
舞(プロフ) - 更新頑張ってください^_^ (2021年2月9日 0時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2020年11月8日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ぼたんあめ(プロフ) - この小説とっても好きです!更新応援してます♪ (2020年10月27日 7時) (レス) id: 07fb25626d (このIDを非表示/違反報告)
えむ(プロフ) - 初めまして突然すみませんこちらのお話読ませていただいたのですが見ていてとても続きが気になりました!更新頑張ってください、楽しみにしています! (2020年2月1日 20時) (レス) id: 41deac151f (このIDを非表示/違反報告)
カオリ(プロフ) - 無限城が無惨城になってますよ。気になってしまってすみません。 (2019年11月16日 23時) (レス) id: f2976f8dda (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:旧華 | 作成日時:2019年11月2日 0時