イチョウ並木のセレナーデ (ページ21)

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「そうか、そこまで
　聞いたんだ……」

俺はベンチから太輔を見上げて
心はズタズタだったけど
軽い感じで聞いてみることにした。

「そんなに長く
　思ってる人がいたんだな。

　俺さ～親友なのに何も知らなくて。
　どんな子だよ、高校の時からか？」

太輔は悲しそうな顔をした。
この問いかけで傷ついてるような
表情をして

「ゴメン……言えない」

　
　

「え……ひょっとして
　結婚してる人なのか？」

太輔は首を振って

「そういうんじゃないんだ、
　でも絶対叶わない……」

「そうか……だったらもう
　気がないのに違う子と
　付き合うのはやめろ。
　マイコちゃん傷ついてたから。

　そんなことを続けるなら
　お前との付き合いもこれまでだ」

理不尽だけど何も話してくれない
太輔に腹が立ち
自分の心が保てなくて
思ってもないことを口走る。
早くこの場から立ち去りたかった。
明日になれば落ち着けるだろうか、
元通り付き合える？

「色々聞いて悪かったな、
　もう帰る。

　コーヒーありがとな」

「……待って」

太輔が俺の手首を掴んだ。
やめてくれ、これ以上一緒にいると
抑えられなくなる。

「離せよ！
　今日はもう……」

太輔は掴んだ手を引き戻し
こう言った。

「宏光
　……どうして泣いてるの？」

気づくと俺は泣いていた。
こんな姿見せたくなかったのに……

もう限界だった。