イチョウ並木のセレナーデ (ページ19)

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バイト先で会った太輔とは
多少気まずい。
ただ向こうも何の用事とかは
聞いて来なかったし
マイコちゃんのことも何も
言わなかった。

俺はマイコちゃんが言った
「ずっと前から好きな人がいる」
の言葉にモヤモヤしていた。
でも聞けねぇよなぁ……
別れたことすら聞いてないのに。
そんなことを考えてると太輔が
近くにいて

「宏光」

「ん？」

「今日帰り一緒に帰れるか？
　少し話したいんだけど」

「……ああ、分かった」

太輔の話はだいたい想像できる。
彼女ができても太輔の近くにいるのは
俺だという自負があったから
耐えられてた。
でもずっと前からならそれは
地元の子に間違いない。
中学か、それとも高校？
太輔が好きだからうまくいって
ほしい気持ちもあるけど

───ソンナハナシキキタクナイ
　オレジャダメカナ？

これを言ったら「親友」のポジションも
失う。
でも心が張り裂けそうになる。
どんなにお前を想っても
むくわれることはない。

バイトが終わった後太輔は
自販機で缶コーヒーを２つ買って

「寒いけど公園でいい？
　時間大丈夫かな、
　明日土曜だから授業ないだろ」

俺達は昔よく遊んだ公園に向かって
歩き始めた。