恋とか花とか気持ちとか。 3 ページ8
白いカーネーションを見つめる。白い花弁が目に焼き付けられる。
「……まさかな。御伽噺じゃあるまいし」
ありえない。と、すぐに切り捨てるが、それでも花が気になって、また見つめる。と。
「みゃあー！」
後ろから突然響いた鳴き声に思わず花を取り落とした。
後ろを振り向くと先程の白猫が自分の足元でこちらをじろり、と細められた目で憎々しげに見ていた。口には鼠の死骸を咥えている。
あ、と。やばいな、と。その二つの単語が瞬間おそ松の頭の中を駆け抜ける。
動けずにいると、今度は甲高く、もう一度猫が鳴いた。
「うわ！ 悪かった！」
そう言いながら、ビルの隙間から飛び出す。鳴き声に追い立てられるようにおそ松は走る。
一瞬脳裏に白いカーネーションが浮かんだが、そんなことはどうでもいい、と振り払い、おそ松はとにかく走った。
.
「たっだいまー」
ガラガラ、と音が立つ。
玄関の引き戸を開けると、立ったまま靴を脱ぐ。家の中に上がり込み、上がり框に膝をつくと、つま先を扉の方に向け、靴を揃える。一連の動作をやり遂げると、おそ松は居間に向かった。
先程猫に追いかけられたおそ松はコンビニでつまみとビールを買って、その後はまっすぐ家に戻って来た。
居間には一人、トド松がいた。テーブルに両手を伸ばしながら、スマホを弄っている。
「あれ、トド松だけ？ 他の奴らは？」
声を掛けると、トド松はこちらをちらとも見ずに、言葉を返してきた。
「おかえりー、おそ松兄さん。カラ松兄さんは居もしないカラ松girl探しで、チョロ松兄さんはライブ。一松兄さんと十四松兄さんは散歩だよ」
「ふーん」
一息に言い切ったトド松にそう返すと、テーブルの上に商品が入ったコンビニ袋を置き、トド松の真向かいに座る。
スマホを弄っているトド松をボーッと眺めていると、おそ松の頭に先程の白いカーネーションが思い浮かぶ。次にトド松のスマホが目に入った。トド松に聞いてみよう、と考えつく。
「なあ、トド松ー、白いカーネーションの花言葉って何？」
トド松はやっとこちらの方を見ると、首を傾げた。
「おそ松兄さんが花言葉？ 何で？ 好きな人でもできた？」
「は？ そんなんじゃねえよ。てか、俺が好きなのトト子ちゃんだから」
どうしてそんな結論になるのか疑問だが、とにかく言葉を返すと、トド松は興味なさげに言う。
「ふーん。ま、最後のはちょっっと聞き捨てならないけどいいや。今調べるから待ってね」
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
