愛と輪廻は交差する？ 6 ページ43
付き合うときにも懸念していた事項がおそ松の脳裏に過ぎる。考えたくない、と振り払うように言葉を発した。
「やっぱり一つでも欠けたら俺じゃねえってことじゃねえか。何が違うって言うんだよ」
そう言うと、カラ松はまるで諭すように(実際諭すことを目的としているのかもしれないが)、言ってきた。
「何でわかってくれないんだ？ そんな限定的なわけではないんだ。
ただ、未来のおそ松は、「おそ松」じゃないだろう？」
そう言いたいのはこっちだ、と叫びたかった。声を上げたかった。
何でわかってくれないのだろう？ 俺はこんな風に言い合いをしたかったわけじゃない。ただ、お前に、「したい」、とただその一言を言ってほしかった。「当たり前だろ」、と笑いかけてほしかっただけなのに。
そこで浮かぶのは“俺があいつで俺達が俺だった”頃。お互いのことが何でもわかった、すべて理解していた頃。もう戻ることはないあの頃。
目の前にいるのは変わってしまった“俺”じゃないカラ松。自分の恋人。
ただやるせなかった。それを埋めるかのようにおそ松はまた声を発した。
「はっ、じゃあ記憶喪失になったらどうだよ？ 今、ここで俺が事故にでも遭って、記憶喪失になったらどうだ？ その俺のことは好きだって言うのか？」
「当たり前だろ。それは紛れもなく「おそ松」なんだからな」
声を発し続けると、まるで口だけが別の生き物になったかのような錯覚に陥る。
カラ松がそんな自分に追い討ちをかけている。そんな気さえした。
カラ松が自分の思いとは別のことを主張している。その事実がしっかりと形を持って襲いかかってくるようで。戻れないあの日々が目に浮かんでくるようで。
幸せなはずなのに。カラ松はこうだと、今目の前にいて、自分とは別の考えを持っている別の人間なのだと、その人間を好きになったはずなのに。
わけがわからなかった。逃避したかった。
さっきからカラ松が言っている「おそ松」とは何なのだろう。自分とは何なのだろう。
「教えてくれ」、とそう叫ぶ代わりに問いかけた。
「その基準は何なんだよ。記憶喪失も、入れ替わりも、転生とそう変わらないだろ？」
カラ松が口を開く様子が、おそ松の目に焼き付くかのように見える。
カラ松は激しさを押し込めたかのような声色で、喋り始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
