恋とか花とか気持ちとか。 10 ページ15
「ああカラ松、もう、だいじょう……」
すべて言い切ることは叶わなかった。また喉につっかえを感じたからだ。喉がまた痛み始める。
言い切る代わりというように、空咳が出た。喉に深く鋭い痛みが走る。酷くなった気がした。
どうして、吐いたのにどうして、とおそ松は理不尽な思いがした。なんだかよくわからない内に疑問が溜まっていく。
自分は本当に花を吐いたのか？ 何でまた喉が痛み始めているのか？ そもそも、花を吐くことなんてあるのか？
最後の疑問が頭に浮かんだとき、おそ松の脳裏にある言葉が思い浮かぶ。
＿＿＿＿嘔吐中枢花被性疾患。
「……あ」
おそ松は目が覚めるような思いだった。そうだ、あるじゃないか。ただの御伽噺だと、都市伝説だと、そう切り捨てたが、ある。おそ松の頭にトド松の言葉が再生された。
『＿＿正式名称は嘔吐中枢花被性疾患。通称花吐き病。昔から潜伏と流行を繰り返してきていて、片思いを拗らせると口から花を吐き出すようになるらしいよ。感染経路とか、治療法？ も書いてあった気がするけど覚えてない』
片思いを拗らせると。そう、トド松は言っていた。
(……トト子ちゃんか？)
片思いの相手、と思い浮かべたときに真っ先に思い浮かぶのは、我らが幼なじみトト子ちゃんだった。
しかし、それはなぜか違う気がした。他に好きになる女の子など居やしないのに。じゃあ誰なんだ、と思考を巡らせようとしたところで、今まで少し治まっていた痛みがまた酷くなった。思わず呻く。
「ぐっ……」
すると。
「おそ松！ 大丈夫か！？ 心配するな、オレはドアの外から慰めることしかできないが、オレがついてる！ 頑張れ！」
カラ松の声がした。
(……あいつ俺のために)
胸に温かいものが広がる気がした。もう少し頑張れるような。
……その時。
「うぐっ！？ ぐえ、かは、お゛えっ」
思わず便器の縁に手を掛けながら覆い被さって吐く体勢を取る。
口の中から紅い花弁を順に花が出てくる。自分が花を吐いている、という事実がすごく気持ち悪くて、最後は目を瞑って吐き出した。
ポチャッ、と二輪目の薔薇が、水だまりの中に落ちる。お互いに重なり合って水だまりの中で浮いている。
(……もしかして)
おそ松は気づいた。もしや、自分の片思いの相手とは。
「おそ松、どうした！？」
ドアの外でカラ松が騒いでいる。その声が遠く聞こえた。
(もしかして、俺は)
「返事してくれ！！」
(……こいつが、好き、なのか)
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チョロ松girl⊂⌒⊃ - とても、綺麗な話でした！ そして、色々と考えさせて貰いました。 (2019年7月15日 22時) (
レス) id: d9fccfe3cd (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» 少しでも貴方の考えの参考になったのなら嬉しいです。続編でもよろしくお願いします。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 紫流さん» 私は常々人の心を動かすのが物書きの仕事だと思っています。夢に一歩近づけたかな、と嬉しくなりました。こちらこそ素敵なお言葉をありがとうございます。 (2016年12月11日 18時) (レス) id: 7de9db5b63 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 今回のもとても綺麗でおもしろかったです！ (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新しいの読ませていただきました 今回のは読んでいて、あまり輪廻の話に興味がなかったんですが、来世でもその人を好きでいられるかというのは難しいと思いました。だって逢える確率の方がひくいもん、だから今精一杯の愛を！ってことかなぁと考えさせていただきました (2016年12月7日 8時) (レス) id: 1de2cb0f26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Aster | 作成日時：2016年8月30日 8時
