magi 2

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ガタンゴトン、ガタッ、ゴトンと揺れる、屋根のない簡素な馬車に身を任せる。

　アラジンは生きている。アリババはそう確信していた。
　あんな凄い奴が死ぬ筈がない。そんな彼が、自分にこう言ってくれたんだ、と。

『きみは勇気ある人だよ！絶対に』

『僕はきみが大好きなんだ！』

　迷宮からの帰り、言われた言葉がまた頭の中で反響する。
　あの言葉が、アリババは本当に嬉しかった。
　あんなことを言ってくれる人間は初めてだったから。立ち止まっている自分を引っ張り上げてくれたように……

　────お前みたいに格好良くはいかねえけどさ、だから俺、行くよ。

　覚悟して顔を上げる。
　こんな所で立ち止まっているのはアラジンの望んでいることなんかではない。自分は自分のやるべきことをやりながら、アラジンを探す。絶対に見つけてみせる。そして、琥珀とも一緒に、全員揃って冒険をしよう。

　約束したから。

　アリババは憑き物の取れたような顔で空を見上げる。
　こちらを振り返って、屈託のない笑顔で笑い手を振る友を思いながら。

　こうしてアリババはアラジンと別れ、一人バルバッドへ旅立って行った。
　彼が手に入れたのは決意と、少しの財宝と、そして、『迷宮』の不思議な力であった。

◇

　同刻、チーシャンから遠く離れた大地。
　さわやかな風が吹いて、草花は揺れる。動物達は時折なにかに反応するように顔を上げ、耳を動かす。
　遠くからは多くの馬が走る音。ガガ、ガガガと蹄を鳴らす。
　先頭を走っていた青年は何かに気付くと右手を上げ、後ろの者達に止まれ、と指示をする。
　草原に横たわっているのは敵影でもなく、人、しかも小さい子供だった。