あの日、見た星に願いを。【オリジナル】 (ページ11)

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Ⅸ ページ11

光輝の家は、ごくごくシンプルでオシャレ。
無駄に着飾っていなくて、家具も無地で白や黒、グレーが多い。
一軒家のくせに屋上まで付いている。

私の家みたいな小さい一軒家で中身がゴチャゴチャと散らかっているのとは大違いだ。

(……懐かしい)

光輝が死んでから光輝の宅には一度も上がっていない。
ご両親にも殆ど会っていない。

光輝が死んだことへのショックなのか、ご両親は前にも増してお仕事に打ち込んでいるらしい。

だから、きっと二年後のこの家にある光輝の仏壇は毎日ほぼ独りぼっちで留守番している。

二年間もの間、光輝とは会っていなかった。

「なんか食べやすいのつくってあげるから、光輝あんまり動かないでね」

「お前、料理できたんだ」

「おうおう、風邪のくせに随分な憎まれ口叩くなァ？この卵、貴様に投げつけてやろか？」

「恐縮ですが御遠慮させて頂きます」

やっと黙った光輝を横目にお粥を作りはじめる。
今の季節は冬だし、風邪の時に食べやすいのはお粥だろう。

お湯を沸かしながら冷凍庫を開けると、必然的に冷凍保存してあるお米がある。
ご両親が共働きだからお米は殆ど冷凍保存なのは知っている。これは幼馴染の特権。

「青ネギとか入れようかな……」

冷蔵庫に運良くあった青ネギを包丁で細かく切っていく。

昔は、親が忙しくて一人の光輝をうちに呼んで一緒に夕飯を食べたりしたものだ。

だけど思春期になっていくにつれて、お互いに恥ずかしくなっていき、そういう機会を失って喧嘩も多くなった。

幼い頃なら何でも言える仲だった。
だけど今じゃ、素直になれない。
光輝が風邪をひいているのに『大丈夫？』の一言さえかけてあげられない。

もっと話したい。
伝えたい。

もし、もしも、願いが叶うとするなら、

どうか光輝を、私達を

大人になるまで生きさせてください……。

無機質なキッチンに包丁の音だけが単調に響いていた。