あの日、見た星に願いを。【オリジナル】 (ページ12)

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Ⅹ ページ12

「卵がゆ、できたよー……って、あ……」

お粥をお盆に乗せてリビングに行くと光輝がソファにもたれかかって寝息を立てていた。

「あー……寝ちゃった……」

ていうか顔赤いな……。この人本当に薬飲んだ？
絶対、薬、『食後』って書いてあるんじゃない？

チラッとソファの前に置いてある小さい机の上の薬のパッケージを見てみる。

「……やっぱり」

想定通り。『食後』と書いてあった。
光輝っていつも夕飯とかどうしてんだろ……。

ため息をついて、もう一度光輝を見る。
可哀想だけど起こした方が良いよね。
薬飲まないと治るものも治らないし。

お粥を机に置いて、控えめに光輝の肩を揺すってみる。

「おーい光輝ー？起きてー」

一向に起きる気配が無いんですけど。
大丈夫？この人生きてる？

光輝の前髪をかきあげて額に手で触れてみる。

「あっつ……」

三十八度超えてるかなぁ……。
体温測ってみるか……。

体温計を取りに行こうと立ち上がったその時だった。

「わっ……」

光輝に手を掴まれる。
いや起きてたの？いつ？

「ちょ、光輝……」

「……やだ」

「え」

いきなり何を言い出すんだ。この生物は。
そんなこと言われても……

「あ、えっと、体温計取りに行きたいんだけど……」

「……」

光輝は目を瞑ったまま。
ん？起きてる？寝てる？さっきの寝言？

寝言なら大丈夫かな……。

空いている手でそっと光輝の手を剥がそうとすると

「えっ」

グイッと手を引っ張られて光輝の腕の中にスッポリ埋まってしまう。

「ちょ、光輝……」

「……ん」

「え……」

「ごめん……」

今にも泣きそうな、それとも泣いているのか。
わからないけれど、背中越しに伝わる光輝の手の震えが妙に心配に感じた。

光輝が、あと九日で死ぬ。死……

考えるだけで背筋が凍るような気がして光輝の背中を優しくポンポンと叩く。

……ねえ、
なんでそんなに悲しそうなの。
なんでそんなに甘えるの。
なんでそんなに震えているの。

震えないで。大丈夫だから。

「……ここにいるから」

私は、光輝は、ここにいるのに。