検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:9,634 hit

7 ページ8

喫茶店を出て、ビルから出る頃にはタイムリミットまで、あと二十秒になっていた。

いける。Aを助けられる……!!

そう思い、ビルから出たその時だった。


「キャアアッ!!!」


周囲の人の叫び声。

Aの蒼白した表情。

上から降ってくる空気。


上を見上げると、ビルの屋上にあった大きなオブジェが古びていたのかバランスを崩し、俺とAの二人に直撃しようとしていた。




『車に撥ねられることだけがAの死じゃない』





「みっみな……!!」


Aが俺を庇おうと、手を出す。

駄目だ。死なせたらいけないんだ。



その一心で俺は逆にAを庇うように、Aを下にして抱きしめた。

このままでは俺にぶつかってしまう。

それがわかるAは必死に抵抗するが、俺は離すまいと更に強く抱きしめる。


ごめん

俺は死ぬ。


Aを幸せにできない。


A。

どうか、俺以外に良い男を見つけて幸せになってくれ。

それからは世界の時間が遅く見えた。

既に不回避の高さまで落下しているオブジェ。


ごめんな、A……。





『目先のものだけを見るな』



『単純な思考をするな』





アイツの言葉を思い出した。



目先のものだけ


単純な思考……





今までの記憶を思い出す。




『死なないよな……お前……。
頼む、死なないでくれっ……神様っ……』




『俺はいつの日かAに貰った、少し分厚めのメモ帳を取り出した。
この中にAとの思い出を書いていたりもした。


「……っ」


考えれば考えるほど、悲しさや怒りや悔しさという複雑な感情が込み上げてきて、Aの病室で俺は情けなく嗚咽を漏らしながら泣いてしまい、いつしか眠りに落ちていた。』



……そんなもので?


そんなもので出来るのか?



いや、やるしかないんだ。



俺は内ポケットに手を入れ、ある物を取り出し、頭に当てた。


強い衝撃と共に時計の針は一周した。

8→←6



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
7人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , パラレルワールド , 事故   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

昆布の神(プロフ) - 日向鬼@青いブレスレット運動参加さん» 一コメありがとうございます!パラレルワールドとかの都市伝説的なやつが私大好きなんですww ファンなんて本当に嬉しいです!! (2020年5月24日 21時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
日向鬼@青いブレスレット運動参加(プロフ) - え!?やった!僕コメ一番! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 01514d0bec (このIDを非表示/違反報告)
日向鬼@青いブレスレット運動参加(プロフ) - パラレルワールドの世界線もいいですねえ…ほんと好きだわ。昆布さんの作品。なんか最後には全部繋がるし、その場の空気も伝わって切るし、神作者さんだよ!僕はもう昆布さんファンになった! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 01514d0bec (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/  
作成日時:2020年5月24日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。