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喫茶店を出て、ビルから出る頃にはタイムリミットまで、あと二十秒になっていた。
いける。Aを助けられる……!!
そう思い、ビルから出たその時だった。
「キャアアッ!!!」
周囲の人の叫び声。
Aの蒼白した表情。
上から降ってくる空気。
上を見上げると、ビルの屋上にあった大きなオブジェが古びていたのかバランスを崩し、俺とAの二人に直撃しようとしていた。
『車に撥ねられることだけがAの死じゃない』
「みっみな……!!」
Aが俺を庇おうと、手を出す。
駄目だ。死なせたらいけないんだ。
その一心で俺は逆にAを庇うように、Aを下にして抱きしめた。
このままでは俺にぶつかってしまう。
それがわかるAは必死に抵抗するが、俺は離すまいと更に強く抱きしめる。
ごめん
俺は死ぬ。
Aを幸せにできない。
A。
どうか、俺以外に良い男を見つけて幸せになってくれ。
それからは世界の時間が遅く見えた。
既に不回避の高さまで落下しているオブジェ。
ごめんな、A……。
『目先のものだけを見るな』
『単純な思考をするな』
アイツの言葉を思い出した。
目先のものだけ
単純な思考……
今までの記憶を思い出す。
『死なないよな……お前……。
頼む、死なないでくれっ……神様っ……』
『俺はいつの日かAに貰った、少し分厚めのメモ帳を取り出した。
この中にAとの思い出を書いていたりもした。
「……っ」
考えれば考えるほど、悲しさや怒りや悔しさという複雑な感情が込み上げてきて、Aの病室で俺は情けなく嗚咽を漏らしながら泣いてしまい、いつしか眠りに落ちていた。』
……そんなもので?
そんなもので出来るのか?
いや、やるしかないんだ。
俺は内ポケットに手を入れ、ある物を取り出し、頭に当てた。
強い衝撃と共に時計の針は一周した。
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昆布の神(プロフ) - 日向鬼@青いブレスレット運動参加さん» 一コメありがとうございます!パラレルワールドとかの都市伝説的なやつが私大好きなんですww ファンなんて本当に嬉しいです!! (2020年5月24日 21時) (レス) id: aca7717c5b (このIDを非表示/違反報告)
日向鬼@青いブレスレット運動参加(プロフ) - え!?やった!僕コメ一番! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 01514d0bec (このIDを非表示/違反報告)
日向鬼@青いブレスレット運動参加(プロフ) - パラレルワールドの世界線もいいですねえ…ほんと好きだわ。昆布さんの作品。なんか最後には全部繋がるし、その場の空気も伝わって切るし、神作者さんだよ!僕はもう昆布さんファンになった! (2020年5月24日 21時) (レス) id: 01514d0bec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2020年5月24日 8時