タイムリミット五分前

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「う……」


目を覚ますと、視界は真っ暗闇だった。どうして……ここはどこだ……？


『……起きたか』


いつの間にか俺の目の前に、闇に包まれた人影のようなものがあった。
なんだ……？誰だ……？コイツは……


『まあもう一人のお前とでも思っておけ。
それより、もっと大事なことがあるだろう』


「大事なこと……？」


思わず首を傾げると、もう一人の俺は『馬鹿か、お前は』と罵声を吐いた後に言った。


『Aのことだ』


「！！」


『A』というワードを出されて、俺は身を乗り出した。
Aについて知っているのか。
もう一人の俺は一息ついて口を開いた。


『単刀直入に言う。このままだとAは容態が悪化して死ぬ』


「は……？」


死ぬ？Aが……？
そんなの


『嫌だろ』


もう一人の俺が言う。


「当たり前、だろ……！大切な人なんだ……！！」


そう、この世でたった一人の大切な俺の彼女。


『……一つ、チャンスをやる』


「チャンス……？」


もう一人の俺は『ああ』と頷く。


『Aが事故にあった日に時間を巻き戻してやる』


「！？ 本当か！？」


時間を巻き戻せば、やり直せる。
そしたら……


そこまで考えて冷静になった。

こんなにもうまい話があるのだろうか。
そもそも時間を巻き戻すなんて、そんなことがあるわけが……


『唯一の手段だぞ？』


もう一人の俺が気持ちを見透かしたように言う。
唯一(・・)の手段……。


『それにAの容態が悪化して死ぬのは本当だ』


『死ぬ』という言葉に肩を揺らす。
死んで欲しくない。


『さあ、どうする？』


唯一の希望に


「……わかった」


縋り付くことしかできない。

こんな無力な俺でごめんな、A。

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