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「……わーったよ」
国見が屈んで海水を掬いとる。
「ねえ、国見さ」
声をかけると、国見が私を見た。
ずっと考えていた。何を言ったら、二人は動揺してくれるかなって。『ただ、それだけ』なんて、少しだけ腹が立ったから、仕返しがしたい。
「
海風が私達を撫で上げた。
かたまった国見を見て、私は視線だけ上げて金田一を見た。同じように目を開いて立ち尽くしていた金田一は、目が合うと我に返ったように国見の腕を引っぱった。
「は！？ ちょっ……！」
ザブンと音が鳴ったと同時に小さな水飛沫が上がって、水の粒がTシャツをわずかに濡らした。
「……ふはっ」
国見が顔を上げて私を睨む。ずぶ濡れになったので、もはやどうでもよくなったのか、国見は浅瀬にそのまま座り込んだ。
「あはははは！！」
諦めたような顔をした国見がドツボにハマり、私は堪えきれなくなって声をあげて笑った。
「…………笑いすぎだろ」
「ぶっ……ふっ、だ、だって……初めて見た、国見の、ふんっ、マヌケ顔……！」
「オマエらがやったんだろうが……！ ていうか何なんだよ、打ち合わせしてたみたいな団結力！」
「いや、葉山がこっち見たからそういうことかと思って……」
金田一が頭を搔く。普段ターゲットにするなら金田一が適任なのだが、あえて国見をターゲットにすることでいい反応を見られた気がする。
「くふっ……むり……お腹痛いっ……」
お腹を抱えて笑っていると、国見が「チッ」と小さく舌打ちをこぼした。お？ と思った瞬間、体のバランスが崩れて自分が傾いた。ヤバい、と悟ったときには時すでに遅し。顔から海にドボンしてしまった。音がふたつした気がするから、これ金田一もやられたな。
反射的に顔を上げたが、目が開けない。
「ちょっ、目を開ける勇気がでない！」
「いや意外と大丈夫だから」
「えホントに？ ほんとは開けたら痛いやつで、私が痛い痛い言ってるの見て笑おうとか、そういう魂胆じゃない？」
「オマエそういうときばっかり
「ごめん」
濡れた睫毛を持ち上げて目を開けると、言われた通り意外と痛くなかった。
金田一を見ると、案の定彼も二次被害に遭っていたようで、若干納得のいっていない顔をしていた。彼を巻き込んだのは、紛れもなく私だ。
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2024年1月12日 2時
