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生まれた時から自分の人生などなかった。
他人に敷かれたレールの上を歩くこと以外は許されなかった。
そうして今もAは、細くて狭いレールの上を歩き続けている。
かと言って、特にやりたいことがあるわけでもない。
行きたい場所。
食べたいもの。
欲しいもの。
会いたい人。
着たい服。
そんなもの、どうつくるのかすら誰も教えてくれなかった。
サターンを敬ってもいなければ、好きでもない。
それでもAにとって、サターンがいなくなることは自分の存在価値がなくなることとイコールなのだ。
「お前でも可愛いことは言えるものだな」
「私はいつでも可愛い」
冗談なのか本気なのかもわからない顔でAが言う。
しかし、そんなAの珍しいジョーク(みたいなもの)にサターンは特別反応することはなかった。
代わりに、サターンは右手はマウスの横についたまま左手をAの体に回すと唇をAの耳に寄せた。
「＿＿＿安心しろ。お前が死ぬまで管理してやる」
粘着質とまではいかないが、
サターンはAを放そうとはしてくれない。
依存しているわけではない。
けれど、死ぬまでギンガ団の立場から逃がさないとでも言うように、絡みついては引き止めてくる。
今のところ、ギンガ団をやめたいとは思っていない。
でも、退屈な日々になにか刺激が欲しいと思っているのは確かだ。
Aが天井を仰ぐと、サターンの腕の中で脳裏によぎったのは、コトブキシティでギンガ団を退けた子供のことだった。
あの子供なら、退屈しのぎになるかもしれない＿＿＿。
そう、考えてしまった。
＊
コウキ side
もうすぐノモセシティに着く……というところで、見覚えのある服を着た女の子が、さも俺を待っていたかのように腕を組んで仁王立ちしていた。
「なにやってんの……？」
「君を待ってた」
まさかのドンピシャ。予想通り。
前のコトブキシティで俺に声をかけたギンガ団幹部＿＿＿ウラヌス、だ。
「君の名前、なに？ 聞いてなかったなって思って」
まさかそれを聞くためだけに来たのだろうかという考えが頭をよぎったが、やっぱり、まさかギンガ団の幹部がそのためだけに俺に会いに来るとは思えない。
「……コウキ」
少し警戒しながら言うと、ウラヌスは「コウキ」と
「コウキね……覚えた」
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2023年1月26日 20時
