・ ページ11
*
Aが見た限り、計画が成功したときなどに笑みをこぼすサターンは確かに存在する。が、Aに対して笑ってくれたことがない。
べつに笑ってほしいとも思わないが、ここまで自分にだけ当たりが強いのも如何なものかと思う。
「数日太陽浴びてないんだから、モチベーションも下がるわよ」
アウトドアかインドアか。
Aは自分ではインドア派だと思っているが、
太陽光を数日浴びないことがここまでストレスになるとは思わなかった。
「フン。愉快だな」
「うっざ」
六つ歳上。かつての上司。
それでも、Aは敬意を払う気など毛頭ない。
そもそも彼女は世界の誰も
『アカギ様』と口にする自分がたまに笑えてくるほどに。
「……サターンは、いつまでここにいるの」
「そんなに私と同じ空間が嫌か」
「そういう意味で言ってんじゃないわよ」
サターンが流し目でAを見た。
Aはブルーライトを発光するパソコンを見つめながら口を開く。
「アカギ様がシンオウ地方を支配して、
ギンガ団の目的が終わったら、どうするの」
神話を調べ、伝説ポケモンの力でシンオウ地方を支配する＿＿＿＿確かにそれが大まかな目的なのだが、アカギは“その先”を教えてくれない。
つまり、支配したあとの
アカギは頭のいい人間だから、
「……さあ。どうだろうな」
Aを怪しむわりに、サターンこそ何も教えてくれない。
特に、サターン自身を知りたがる質問に対しては必ず答えを濁してくる。
そういうサターンのやり方が、時折ずるいと感じてしまう。
「お前はどうするつもりだ」
「それまで命が続いてるのか知らないが」と皮肉めいたことを付け足すサターン。
サターンはどうやら近いうちにAが死ぬと思っているらしい。
「……私は、あんた次第だから」
露出された右足の肌寒さに、Aは自分の右足を撫でた。
「サターンがいなくなるなら、私もやめる」
Aは最初から決めている。
自分の存在価値は自分で決めるものじゃない。
他人が決めるものだ。
Aに生きるすべはひとつしかない。
そんな彼女に生きる方法と存在価値を同時に与えたサターンがギンガ団からいなくなるのなら、Aもギンガ団にいる意味は無いのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2023年1月26日 20時
