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「見えますか。ここから、あの子達が」
Aさんが指さした先には、いっぱいに広がる大自然と、そこに暮らすいろんなポケモン達がいた。森、草むら、雪山、川や湖や海、空にだってポケモンは棲んでいる。
「知らないことやわからないことを調べたり、自分なりに考察することが昔から好きでした。だから、子供ながらに小さい足でほっつき歩いて、その度にグルーシャや親に捜されて連れ戻されたりして……」
機械的な表情と口調からは、Aさんが何かを“好きになる”というその姿自体、うまく想像できなかった。しかし、研究者として成っている以上、少なくとも好奇心で動いていることは間違いない。
____『天才の考えることは、凡人には理解できないということです』
今になって、校長先生の言葉が思い起こされる。
「この世界には多くのわからないことがありますが、ここに来るようになって、そのわからないことの中でも一番強く惹かれたのがポケモンのことだった。群れるポケモン、群れないポケモン。進化するポケモン、進化しないポケモン。彼らの何が違うんだろう。逆に何が同じなんだろう……様々なことを考えては、ウキウキワクワクと高揚が止まらなかったことをよく覚えています」
金色の蝶のイヤーカフが、太陽の光に照らされてキラリと光った。
Aさんが柵に肘を預けて振り向く。
「長々と自分の話をすみません。呼び出したのは、確認したいことがあるからです」
すると、どこからかスマホの振動音のような音が聞こえてきた。Aさんのポケットからスマホロトムが飛び出してきて、画面が向けられる。
『ここからはボクが話そう』
「え、誰?」
画面の中には、白衣を着ている男性。後ろのホワイトボードには難しい計算式や用語がたくさん書かれている。意味はわからない。
『ハロー。はじめまして、ハルト。ボクはフトゥー。パルデアの大穴の奥、“エリアゼロ”にてポケモンの研究をしている』
「パルデアの大穴……。エリアゼロ?」
「パルデア地方の中央にある立ち入り禁止区域です。大きな自然の壁に覆われていて、窪みのようになっているところですね」
『単刀直入に話そう。学籍番号805C393、ハルト……。キミはミライドンという不思議なポケモンを連れているな?』
「はい」
素直にそう言うと、フトゥー博士は『話が早くて助かるよ』と頷いた。
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作者名:昆布の神 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時:2023年2月25日 23時