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「はじめまして。……ペパーさん。フトゥーさんの息子さん」
端正なその顔立ちは、感情のこもっていない微笑みのせいで妙に不気味に思えた。服のベルトには六つのモンスターボールが提げられている。
「……誰だ、アンタ。父ちゃんのこと……知ってんのか？」
「ええ。非常に有名で偉大な研究者ですからね。これでも、学生だった頃からリスペクトしているんですよ」
「父ちゃんはここにはいねえよ。何年も大穴にこもりっきりで帰ってこねえし」
「知っています」
食い入るように女が言った。薄暗い研究室の中で、女が右耳につけている蝶を模した金色のイヤーカフが、意味ありげにキラリと輝いた。
「私が捜していたのは、あの人ではなく、あなたです」
「おれ？」
女は「そう、アナタ」と言って、おれを指さして笑った。
その笑い方は、どこか母ちゃんに似ている気がしなくもない。
「私はAです。私もポケモンの研究してるんですよ。ま、タテマエに過ぎないんですけどね」
「タテマエって？」
訊ねると、女は黙った。薄らとした笑みだけを残して目を伏せると、長い睫毛が目を半分覆う。
「ペパーさん。あなたは、ポケモンバトル、お強いですか？」
今度はおれが黙る番だった。ひとつのモンスターボールを手に取って、見つめる。しかし、おれは首を振るしかできない。
「……いや。苦手だ」
「そうですか。では、強くて頼れるお友達は？」
「べつに……」
「それなら」
また、食い気味に喋ってくる。
無意識の焦燥か、あるいは、ただせっかちなだけか……。
「頼れる友人ができたら、連絡をください。あなたにしか頼めないことがある」
そう言って、半ば強引にスマホロトムを通じて連絡先を交換させられた。最後まで、意図が何もかも掴めない女だった。
「アカデミーではもうすぐ宝探しが始まるようですね。……一応お尋ねしますが、何をなさるつもりで？」
「なんでアンタにそんなこと言わなきゃ……」
「興味。好奇心です！ 研究者って、みんなそんなもんですよ。興味が有るか無いかが全てで、それが研究者の
それを聞いて、もう何年も帰ってきていない父親のことを思い出した。昔から、あまり話したこともない。いつも研究ばかりで、マフィティフだけが話し相手だったあの日々。
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作者名：昆布の神
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fullmoon721/
作成日時：2023年2月25日 23時
