エーデルワイス【1st】【グルーシャ】 (ページ11)

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*

「＿＿＿＿なるほど……」

私の話を聞き終わったクラベル校長が、顎に指を当てた。

「それは……壮絶な運命ですね。おつらかったでしょう」

「いえ、私はべつに」

眉を下げたクラベル校長に、私は頭(かぶり)を振った。まるで本気で心配し、同情しているかのような態度に、感覚が麻痺してしまう。

「ただ……私などよりも、あの子の方が心配というか。……心配というよりは、気になる、という表現が正しいですが」

「その子は、本校の生徒ですよ」

「え」

クラベル校長が取り出したのは、アカデミーの生徒名簿だった。学籍番号から、その名前のページを探し出し、そして私に差し出す。

「この子です」

生徒名簿を受け取り目を通すと、そこには確かに、私が捜している人の名前があった。
ここに帰ったら捜しに行こうと思っていて、アカデミーが怪しいとは思っていたが、こうもあっさり見つかるとは。

「……この子は今、校内に？」

「いえ、それが、出席率があまりよろしくなく……。今日も欠席扱いになっていますね」

まあ、仕方ないのかもしれない。そのような境遇(・・・・・・・)にいれば、逃げ出したくもなるし、グレたくもなるだろう。

周りの環境が、運命が人の人格を左右する。私も、グルーシャも、そうやって変わっていった。

「わかりました。……あとひとつ、相談したいことが」

「はい、なんですか？」

「職をください」

「…………えっ？」

＊

「ハルト！」

リビングのソファにすわって腕時計を付けていると、突然母に呼ばれたので振り向いた。自分の足元では、ホシガリスが丸まっている。

「アオイ、まだ寝てるみたい。ちょっと起こしてもらえる？」

「なんで僕が……」

「お母さん、今手を離せないの！お願い。このままじゃ初日から遅刻しちゃうわ」

「えー……」

結局断りきれず、ため息をつきたい気持ちをこらえて立ち上がった。僕が唐突に立ったので、ホシガリスは驚いたのかビクッと体を震わせた。

「ごめんな」

ホシガリスを撫でて二階に向かう。

ガラル地方からパルデア地方に引っ越してきて、まだ一週間程度しか経っていない。が、今日から転校先の学校があるので、朝から登校しなければいけないのだ。

寮生活になったら、誰があの寝坊助(アオイ)を起こしてくれるのだろう。まさか、また僕なのか。