【金カム】男装剣士の少女と金塊探し (ページ3)

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第一話ページ3

「痛ってぇ」

　目の前の兵士に目潰しを喰らわされ、軍帽を被った青年が叫んだ。目潰しを食らわした軍服の男は、折られた右腕を左手で押さえながらその場から走り出した。

　「この状況で『不死身の杉元』は手に負えん。片腕だけに。」

　兵士がそう呟きながら走るその後ろ姿に、杉元は手に持つ銃で一撃喰らわそうとする。だがそれは実現しなかった。

　杉元の、その後ろにいるアシリパのさらに後ろから、小さな物が兵士の頭目掛けて何かが飛び出したのである。杉元の跳ねた髪を掠め、それは兵士の後頭部に直撃した。

　「落ちる！」

　アシリパがそう叫ぶのと同時に、兵士は雪を滑り、崖下へと落ちていってしまった。

　そして杉元の目の前には、一つの短刀が落ちていた。刃に血がついていないあたり、柄の部分が後頭部に直撃したのだろう。そして二人が後ろを向くと、そこには一人の小柄な少年が立っていた。

　黒い学生帽を目深く被り、口元を黒いマフラーで隠した少年だ。服装もごく普通の着物に袴を着用した、この銀世界では不釣り合いな格好をしていた。しかし注目すべきはその腰に下げた刀だ。「刀のは時代遅れ」と謳われたこの時代では、その不思議な雰囲気をさらに加速させていた。

　「何だこいつは、俺たちを助けたのか？」

　杉元が警戒しながらそう呟くと、少年は顔を上げた。二人を見つめるその目は、黒く、そしてとても力強いものだ。帽子の影に隠れたって、その眼光は鋭さを失ったりしない。

　「…杉元佐一」

　少年から声が発せられる。名前を呼ばれた杉元は、更に警戒を強め、銃を構える準備をする。それを見た少年は少し驚いたように目を見開き、腰に下げていた刀を地面へ置いた。攻撃する意思がないことを確認すると、二人は警戒を緩める。そして少年は、その顔に纏った布を外し、口元を見せる。

　それを見た二人は驚く。何故なら彼の顔は少年のものとは思えなかったのである。

　少し幼さを残した、まるで女性のような美しい顔をしていた。

　「…不死身の杉元さん…ですよね？」

　杉元が返事をする前に、彼女はいきなり頭を下げ、これまでよりも少し大きな声を発した。

　「私は、近藤A。日露戦争であなたと共に戦った、近藤久太郎の妹です！あなたの事は、兄からの手紙で聞いていました。

　生前、兄がお世話になったと聞き、貴方にお礼を言いに北海道まで参りました。」

　杉元は、確かにその少女に、戦場で共に戦った戦友の面影を感じていた。