古い知人 ページ47
食後は併設されたBARへ。カウンターに案内され、人間用の椅子の隣に大型犬用の椅子が置かれた
「何に致しますか?」
「コークハイで」
『マティーニを』
「かしこまりまs…お前、ユズか?」
オーダーを受けたバーテンダーが彼女を見て知らない名前で呼んだ
『…あ、悠君?』
どうやら勘違いではないらしい。ユズ?彼女に纏わるユズという名前は初舞台で演じた、神前 柚月葉(カンザキ ユズハ)くらいだけど…
「やっぱり!ユズは変わんねぇなぁ…あ、今は上野Aさんか」
『あれ、知ってたんだ』
「ママが大ファンだからな。俺あっちとここ掛け持ちしてんの」
『ママ元気?』
「あの人が元気じゃないの酒呑んでない昼間だけだよ」
『相変わらずかww…あ、紹介するね。あたしの、か…じゃないや、えっと…夫、です』
「…え、あ、そっか。どうも」
急に自分に話が向き慣れない紹介のされ方をして、思わず吃って手で顔を覆うと左肩にどんっと小さな衝撃。見ると彼女が俺の肩で顔を隠していた。え、可愛いかよ
『…なんか、夫って言うのめちゃめちゃ照れるんだけどw』
「うん、いきなり言われたこっちも照れてるからww」
『慣れないねw』
「ねw」
クスクスと笑いながら彼女はバーテンさんに向き合う。彼はキョトンとしたままこちらを見ていた
『あのね、まだ夫婦になったばかりっていうか…今日ここに来る前に婚姻届提出してきたの』
「マジか、そんな記念すべき日に当ホテルをご利用頂きありがとうございます」
にこっと笑ったバーテンさんは梅さんのようなカッコ良さに、宏ちゃんみたいな可愛さが混じった人だった。Aちゃんの周りイケメン多いな…
『悠君はね、あたしがバイトしてたお店のバーテン君だよ』
「あー、カクテルの作り方教えてもらった?」
『そうそう。ママのお店は役者志望の子ばっかで、バイト中は役を演じるつもりでって言うルールだったの。だから当時貰った役の名前を借りたの』
「…神崎 柚月葉?」
『そう。ちなみに悠君はも役者。憧れでライバルのすごい舞台女優さんだよ』
「じょゆ…女優!?」
「あ、生物学的上女です」
「すみません、完全に男性かと」
「いえいえ、むしろ役者として褒め事ですよ」
雑談を軽く交えながらコークハイとマティーニを作ってくれたバーテンの彼…基、悠さんと目が合った
「…あ、もしかして旦那さんも声優さんですか?ユズの出てたアニメでお声を聞いたような気がして」
「はい、声優をしてます」
「…もしかして、皐月?」
『おぉー正解w』
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作者名:福招猫 | 作成日時:2021年9月20日 23時