家に帰ろう ページ22
帰りの車内は拓ちゃんが運転、土岐さん助手席。俺とAちゃんとナイトが後ろ
一気に喋りすぎて疲れたのか、彼女は俺の膝を枕に夢の中。車に乗ってすぐにうとうとし始めて、寝ていいよって言ったらこの体制になって、おやすみ3秒。やっぱ拓ちゃんの従姉だわ
「Aに泣かされると思わなかったわ…」
「俺も真っ先に泣いちゃったもん。ナイト、慰めてくれてありがとね〜」
土岐さんは足元で伏せてるナイトを振り向かず手だけを伸ばしワシワシと撫でた
「正直…まだ無理させたくなかったんだけど、あんなの止めらんねぇじゃん…」
「一気に喋ったもんね」
「途中から結構途切れ途切れだったし…声が少し疲れてたし」
「今のアイツは声で芝居が難しいからな…」
「うん」
まだ声を出すのが精一杯で演じる事まで出来ないから、声から感情が分かり易いけど…
三つ編みが解かれ、ふわふわの癖がついた彼女の髪を溶かすように撫でる。写真集撮った時と同じ洗い流さないトリートメントの香りがフワッと漂う。やっぱりいい香り
「野上の眉間のシワがヤバかった。俺付き合い長いけどあんなシワ寄ってんの初めて見たわ」
「シワだけに留めたの褒めて欲しい。だって最初敬語だったのに、Aちゃんが思い出したって分かったら、ずーっと呼び捨てしてたじゃん、ご家族と拓ちゃん以外が呼び捨てしてんの…なんかヤダ…」
「あー…」
「確かに呼び捨てされる、うえちゃんって珍しいかも」
「誰だっけな…最初呼び捨てしようとしたら、ヤダって言われたって」
「先輩女性声優さんだと名前で呼び捨ていらっしゃるけどね」
「あー、朴さんとか坂本さんとかね」
確かに…先輩女性声優から名前を呼び捨てされてるのはたまに聞く。けど男性声優で彼女を呼び捨てしてるのは、拓ちゃんだけだ
「しかもサラッと告ってたし…ナチュラルすぎて、アニメかと思った」
「いや、マジお前よく間に入っていかなかったと思うよ。眉間のシワ凄かったけど」
「だって、Aちゃんからしたら、大事な友人だろうし…」
「うえちゃんを応援してたって事は…絶対知ってたよね。野上君と付き合ってるって」
「彼氏の前で言う度胸すげぇわ…野上に対して宣戦布告かよ、って思ったわ」
「負けねぇし」
ご家族や翔さんのそれには及ばないかもしれないけど、異性として彼女を1番想う気持ちも、彼女に1番想って貰えてる事も。他の色々な事に自信がある訳じゃないけど、彼女の事に関してだけは他の誰にも負けないし、負けたくない
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作者名:福招猫 | 作成日時:2021年9月20日 23時