小さな嫉妬と強さ ページ21
『いは、らくん…』
俯いたまま黙って聞いていた彼女がゆっくりと話し始めた。いくら結構喋れるようになったとはいえ…あまり無理して欲しくない。何より…彼女の御家族や拓ちゃん以外がAちゃんを呼び捨てしてるの…なんか、イヤ。チラっと目が合った拓ちゃんは自分の眉間をトントン指さしてから俺に指をさした。眉間にシワ寄ってるってか…本当、嫉妬してだせぇ…イラつきを誤魔化すように足元のナイトを撫でた
『ごめんね、いま…じょうずに、しゃべれない、んだけど…』
「うん。知ってるから、大丈夫。ちゃんと聞く」
『しょーが、なくなって…いっかいも、うらまなかった…っていったら、うそになる』
「…うん」
『でも、いはら、くんの、おかげで…もっと、いろいろ、みることが、できた。だから、せいゆうっていう、ゆめをもって、かなえる、ことが、できた。もちろん、いっぱい、つらいこと、あったし…しょーの、じこのあと…しょーの、ことを、おおうとした。でも、おさな、なじみが…すくって、くれた。しかって、くれた』
視界の端っこで土岐さんが突っ伏したのが見え、ナイトが俺の足元からトコトコと土岐さん足元に移動して擦り寄っていった
『それから、すてき、な、なかま、にも、めぐ、まれた。いとこと、おなじ、すてーじ、に…たつ、ことが、できた』
今度は拓ちゃんも顔を伏せた。彼女が精一杯言葉を紡ぐ素直な気持ち…少し声に疲れが出始めてるし無理して欲しくないけど…こんなの止めらんねぇじゃん…
『いまは、こえが、ちゃんと、でないけど…でも、おし、ごとが、すごく、た、のしいの。い、はらくん、の…おかげ。ありが、とう』
顔を上げ微笑んでお礼を言った彼女は、やっぱり翔さん同じ強さを持つ妹だ
「…やっぱり、俺Aが好きだよ。あれからずっと。これからも応援してる」
やっと伸ばした眉間にまたシワ寄ったけど許して欲しい。むしろ眉間にシワが寄っただけで済んでるのを、飛び出して行かないのを褒めて欲しい
『あり、がとう。すきに、なって、くれて。あたしに、ゆめを、みつける、きっ、かけを…くれて、あ、りがとう。おかげで、はじめて…だいすき、って、おもえる、ひとに…で、あえ…ました。かれに、であえ、たのは、いはら、くんの、お、かげ、です。あり、がとう…ござい、ました』
いつもみたいに、太陽にだって負けない弾けるような笑顔で言った彼女はこっちを見てウインクをした。あれ…もしかしてちょっとイラッとしたバレてたかな
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：福招猫 | 作成日時：2021年9月20日 23時
