野上さんは天使ですか？6 (ページ20)

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謝罪ページ20

2人と一緒にナイトを連れ中に戻ると、キッチンで彼女が4人分の珈琲入れていて、落ち着かない様子の井原さんがリビングのソファーに座っていた
「はい、鍵」
『ありがと…ごめん、だいにんぐ、に…』
「ん」
カップが3つ乗ったトレイを受け取ると、彼女はカップひとつを乗せた小さなトレイを持ってソファーに向かった

『…どぞ』
「あ、すみません」
ぎこちない2人。卒アルの中、皆で笑いあってた写真が嘘みたいだ
『…えと、いはらくん、こうこうで、いっしょ、だった』
「うん、2人と仲良くしてもらってた。ごめん、急に。表を通ったらピアノの音が聞こえて…どうしてもAに謝りたくて」
そこまで言うと井原さんはソファーから降りて土下座をし始めた
「ごめん！俺のがあんな馬鹿な事言ったせいで翔とAが離れて…本当にごめん！」
『い、はらくん…』
「振り向いてもらえなかったのが悔しくて、それを依存だなんて言って…」
聞こえた言葉に、以前彼女に聞いた話を思い出した
─ 高3の夏頃…クラスの男の子に告白されて、断ったんだけど、そしたら…あたし達双子は変だって。あたしが翔ちゃん依存してるって言われて─
彼女が翔さんから離れる事になった原因。2人の間ぎこちない空気はコレか
「卒業式の日お前が来なくて…あの時の翔の落ち込み方見て後悔してたんだ…ただ振り向いて欲しかっただけなのに、2人を仲違いみたいにさせて…」
兄って言うのは良くも悪くも、下に自分の弱音を言いたくない強がっていたい生き物。俺は妹と仲良くなかったからなおのとこ弱いとこなんか見せたくなかった。きっと翔さんもAちゃんに弱音なんか吐かなかっただろう。卒アルに書かれてた「俺は、Aが隣に居ないことが…寂しいです」って言うのは翔さんの数少ない弱音なのかもしれない
「成人式の時見た2人は高校時代と全然違って…その後翔には謝ったんだけど…あいつは「Aが夢を見つけて頑張れるきっかけを、ありがとう」って言ってて…」
やっぱり翔さんってすげぇ…確かにあれがなけれ彼女は声優っていう道に進まなかったかもしれないけど…感謝出来るかって言われたら分からない
彼女は何も言わずただ少し俯いていてこっちから表情は読めない
「でも、あの雑誌で翔の事故を知って…俺、本当に馬鹿な事したって…すげぇ後悔したんだ。謝って済む問題じゃないことは分かってる。謝ったところで翔は戻って来ないし、俺の罪が消えるわけじゃない。けど、どうしても謝りたかったんだ」