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取り付く島もない言葉に魔神は呆気にとられた。
元より毒の原因に他の魔神が関わっているなど思わず、解決するにも対話という術しかもっていない。けれど相手がこれでは話にもならない

民に悪気はなかったと弁明し、且つ山を荒らしたことについて謝罪を述べた。女の態度は変わらない。これ以上なにを示せというのだろう


「──だからか」

魔神の零した言葉に蓮を撫でる女の手が止まった


「俺たちがこの山を穢したことが許せないから、泉に毒を混ぜたのか」


魔神モラクスは魔神として産まれ、生きている。人間とは違う上位種としての尊厳がある。弁明と謝罪、歩み寄る誠意を見せても尚変わらぬ女の態度に、憤りを感じぬといえば嘘であった。元が己の民の過ちであっても、女が己と同じ上位種であっても。ひとつの譲れぬ矜恃が、そこにはあった


女の蓮がくしゃりと音を立てて、その手によって握り潰される。美しい花弁が形を変えて泉に落ちればそのままはらりと溶けた


「……貴様、この期に及んで私を侮辱するのか」


言葉の綾といえばそうである。魔神たる己がここまでしたのにという傲慢さがあるといえばそうである。互いの憤怒を感じ後に引けなくなったといえば、確かにそうであるのだ


「何が違う。俺の民たちは、お前の毒に苦しんでいる」


女が宙で手を払った。緩慢な動きとは裏腹に鋭い風が魔神の頬に傷を付けた。生暖かい血が流れるも気に留めず、魔神は女を見据えていた。女の愛らしい顔は怒りに染まっている


「この山は私の住処だったが、私は今の今までお前たちの採鉱を咎めなかった。それを慈悲とも知らず、あまつさえ疑義の念を抱くとは! その蛮行、見過ごせぬぞ、魔神モラクス…!」


ハッと魔神が息を呑んだ。女に教えたはずもない名を知られている。それと同時に、純粋な憤怒をぶつけられた違和感と、本格的に感情を露にした女に対する危機感が思考を襲った


「まて、お前と争うつもりはない!」

「ならば出ていけ。早急に! 私の神力を毒とは、これ以上の侮辱があるものか!」


「これだ」と魔神は理解した。違和感の正体だ。
泉に毒を混ぜたのかという言葉を彼女は侮辱だと言った。毒を己の神力だと。ならば、彼女の神力が民にとって毒となる何かがあるはずだ
そこにきっと、互いの齟齬がある

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藤宮(プロフ) - 玉ねぎさん» ありがとうございます。どうぞ楽しみにしててください! (3月17日 1時) (レス) @page6 id: 3b8ff94301 (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ - 続き楽しみにしてます!((o(´∀`)o))ワクワク (3月15日 15時) (レス) @page3 id: fdec3c022a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藤宮 | 作成日時:2024年3月14日 17時

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