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それより緑川くんはわたしなんかと話してて楽しいのかな。


ほら、わたしって口下手だし会話の引き出し少ないしコミュ障だし、顔はかわいいらしいけど陰キャだし、こんなやつと話してたら時間が無駄になるんじゃないのかな。


……なによ、わたしの顔は米屋先輩のお墨付きなんだからね!




「もしかしてわたしと話さないと悪運が降りかかる手相とか出てます?」

「え゛、なんで?」




わたしはかくがくしかじかでその考えに至った経緯を話す。あ、ちゃんと顔のところは端折ったよ、別にナルシストになりたいわけじゃないからね。


わたしの話を聞いてちょっぴり驚いたような、それでもって悲しいような、よく分からない表情になった緑川くんはぐっとこちらに向き直る。


そして膝に乗せていたわたしの手を取ってぎゅっと握った。




「え、緑川くん……?」




突然のその行為にわたしの肩はびくりと震える。やめてくれ、陰キャはスキンシップに弱いんだ。


慣れない人の体温に心臓が暴れだしたわたしは急いで自分の手を引き抜こうとするも、いつもより真剣な緑川くんの表情に気圧されてつい手を止めてしまう。


そんなわたしを見て、目の前の彼は漸く言葉を紡ぎ出した。




「オレがAちゃんと話したくて話してるんだから、そんな悲しいこと言わないで」




……なんで君がそんな顔するの。お姉さん陰キャで友達居ないから分からないよ。




「それにオレ、Aちゃんと話せると嬉しいし……」

「緑川くん……」




少し照れたように、でもはっきりとそう伝えてくれる緑川くんに胸があたたかくなる。


ほんとうに嬉しいよ、そんなこと初めて言われたもん。だけど、だけどさあ




「荒船先輩に金でも握らされた?」

「なんで!?」




わたしと話すのが嬉しいなんて、そんな物好き居るはずない。きっと荒船先輩あたりに山田と仲良くしてくれとか頼まれたんでしょ!!




ここ何年かの陰キャ生活で染み付いた勝手な固定概念がせっかくの緑川くんの言葉をはねのける。


ああほんと、わたしってやつは……




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「荒船先輩が何か言ってきても無理に聞かなくていいですからね。でもいつも話しかけにきてくれてありがとう」

「……別に!(オレがAちゃんと仲良くなりたいだけだって、なんで分からないのかな)」

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作者名:藤丸 | 作成日時:2023年2月26日 23時

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