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5.ファニーゲーム(有栖川帝統) ページ5

ファニーゲーム

蝉の鳴き声と青空を遮るように玄関のドアを閉める。

なあ、知ってるか?
太陽ってさ、こっから1億5000万キロも離れてんだ。やばくねえ?そんなに遠くにあんのに、今日打ってきたとき外暑すぎて死ぬかと思ったわ。2万負けたしな。

「なあ。」
「うん、聞いてるよ。」
Aは洗濯物を畳みながら返事をした。俺はそのちいさな背中をうしろから抱きしめる。Aの視線は俺には向かない。
「あの男さ。俺が棄てといたから。」耳元で囁いてやると、Aは目が覚めたみたいに勢いよく振り向いた。

「約束したじゃん。ねえ。あの人にだけは手出さないでって言ったのに!」
「だってさ、あっちがなんか言ってきたから。俺はなんも悪いことしてねーもん」
そう言ったら、Aはぼろぼろ泣いた。泣き顔がこんなにかわいいなんて、こんなに愛しいと思える女がいるなんて、俺、おまえに会うまで知らなかった。
今頃ゴミ捨て場で蠅に集られているあの男なんか忘れりゃいーのに。そう呟くなり、Aはとうとう声をあげて泣きはじめる。
その姿が見たくて、俺、がんばってあれをバラしたんだ。
「かわいい。」頬を伝う雫を親指で拭う。Aは俺の手を振り払って、恨めしげな目で睨んでくる。「あんたが死ねばよかったのに。」ああ、それ、よく言われんだよな。

「愛してる。もう邪魔なヤツはいねえから、安心してふたりで暮らせるな。」
Aは何も言わずに俯いた。打ち拉がれた姿がかわいくて、抱きしめると、Aのにおいがして、くらくら目眩がして、もっとこいつのことが好きになる。
もっと、近くに。もっと、深くに、俺でぜんぶいっぱいにしたい。いっしょの存在になりたい。融けあいたい。俺とおまえだけの世界がいい。それ以外なにもいらない。指を絡めるように手を握る。
もう逃がさない。
「A、おまえはもう、太陽なんか見なくていいから。ここにいればいい。な、そうだろ?」
Aは黙りこくって、俯いたまんまだ。せっかく俺とふたりきりなのに。「俺を見ろよ」
思ったより低い声が出た。Aがゆっくりと顔をあげる。涙でぼろぼろの、酷い顔。俺はおまえのもの。おまえは俺のもの。なにも間違っちゃいないだろ。「愛してる。」「……」
おまえの眼が俺の眼と合ったそのときには、もう世界は俺たちだけのものだ。

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タメィゴゥ - めちゃ面白かったです!ド好みです!ありがとうございました! (2019年12月23日 18時) (レス) id: 98d1675711 (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - タメィゴゥさん» リクエストありがとうございます!そういうのめちゃ好きです!遅くなるかもしれませんがサマトキ了解しました! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 8c7ee14403 (このIDを非表示/違反報告)
タメィゴゥ - すみませんリクエスト良いでしょうか? もしよろしければ左馬刻様が夢主にでろでろに依存してしまい離れられないお話を書いていただけませんでしょうか? リクエストがもはやキャラ崩壊ですがよろしければお願いします。<(_ _)> (2019年12月2日 19時) (レス) id: 78b2b55a96 (このIDを非表示/違反報告)
43沿い(プロフ) - 林檎麻さん» こちらこそありがとうございます!!!はらいくうこうくん、了解しました!ちょいムズですね…がんばります (2019年11月6日 21時) (レス) id: 8c7ee14403 (このIDを非表示/違反報告)
林檎麻(プロフ) - いつも素晴らしいお話をありがとうございます…とっても好きです…愛してます…。リクエストでよかったら波羅夷空却くんをお願いしてもいいですかね…??応援してます…!! (2019年11月3日 2時) (レス) id: 5fe5e3438d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:43沿い | 作成日時:2018年8月31日 0時

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