第96話 ページ1
後ろから気配がする。
今ここに人がいるとしたならば
それは、たった一人しか当てはまらない。
私は後ろを振り向かないまま、独り言にしては大きい声で言った。
「...凜の従前戸籍を最初に見てびっくりしたの。確かにありがちな名前だけど、漢字まで一緒で。変な運命だなって思ってた。たまたまだって、最初は信じて疑わなかったんだけどね。」
そう言って私は、ゆっくりと後ろを振り向いた。
すると、やはり思った通りの人が、そこに立っていた。
いなかった方が良かった。
勘違いであって欲しかった。
その希望は、今全てかき消された。
これで証明された。
私の仮説は正しかった。
凜は、私のせいでいなくなったんだ。
私は、そこに立つ人の目をしっかりと見て言い放った。
自分にも、言い聞かせるように...
「凜の双子の兄が、まさか」
彼は、不敵な笑みを浮かべている。
私はごくりと、唾を飲み込んだ。
「...拓磨。あなただったなんて...。」
そう言うと拓磨は、
一切その妙な笑顔を壊さないまま
私に歩み寄ってきた。
「...久しぶり。」
「ほんと。2年ぶりに顔見た。背が伸びてるね。」
中学校の時よりも身長差がついている私と拓磨。
私は彼の顔を見上げる体勢になった。
拓磨は歩みを止めると、静かに口を開いた。
「...よくわかったね。いつからわかってたの?」
久しぶりに聴く拓磨の生の声に違和感を覚える。
電話の時のようなノイズが、一切無い彼の声。
もし2ヶ月前だったら、この状況に感動していたかもしれない。
こんな、こんな最悪な再会をするなんて、思ってもいなかった。
「...凜の従前戸籍を見てから、なんとなく拓磨の話に違和感を感じるようになったの。でも、ありえないって思う気持ちが強すぎて、双子の兄の正体なんて考えてもなかった。
一番最初に疑ったのは、凜の母親が火事で亡くなったって拓磨に教えた時。私は時期とか何も言ってないのに、拓磨は双子の兄の年齢を言い当てた。
それに..凜の地元がここの近くだって、言ってないし、場所も教えてないのに、交通事故のこと、調べてきたでしょ?
交通事故なんて、悲しいことに世の中じゃいっぱい起きてる。その中から凜の父親が関わった事故を見つけるなら、起こった時期と場所がわからないと、調べることなんてできないよ。」
観念したような、拓磨の顔。
ああ、だから、凜と拓磨は似てるところがあったんだ...
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fruit(プロフ) - いちうさぎさん» いちうさぎ様!!また私に作品を作る機会を作って下さって本当にありがとうございました!私はまだ今作と前作しかありませんが...楽しんでいただけると嬉しいです!!本当にありがとうございます!!(告白は快くお受け致します) (2020年7月23日 0時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
いちうさぎ - fruitさん» はあ・・・好きです(唐突な告白)まじで面白かったです!他の作品も今から読ませていただきます!執筆、本当にお疲れ様でした!(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年7月22日 19時) (レス) id: d12e33a79f (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - 水の犬。さん» もちろんしっっっっっっっっっかり覚えさせて頂いております水の犬。様!!毎回毎回丁寧なコメント本当にありがとうございます...凄く嬉しいです!「こちらの作品が大好き」もうこれ以上ない嬉しいお言葉です...幸せをかみ締めております...ありがとうございます... (2020年7月20日 22時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - こんばんは、お久しぶりです。覚えていなかったらすみません。番外編も読んでいてすごくゾクゾクしました(いい意味です)!改めてこちらの作品が大好きだなと感じました。 (2020年7月20日 18時) (レス) id: 88a373f457 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - いちうさぎさん» お待たせいたしました!!!遅くなってしまって申し訳ありません...気に入っていただけるかはわかりませんが、読んでくださると嬉しいです!リクエストありがとうございました! (2020年7月20日 17時) (レス) id: b2a1d0f311 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:fruit | 作成日時:2019年8月13日 23時