秘密の存在４【H×H】 (ページ29)

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１４９、好奇心は欲望へと変化するページ29

ドアを開ければ、ソフィアはソファーに座って本を開いていた。視線を上げるその瞳にはもう怯えも不安も見えず、先程のは錯覚だったかとすら思うほどに平然としている。

「あ、おかえりなさい」

「一人になりたいんじゃなかったのか」

「そのつもりだったのだけど、どの部屋に入ればいいのかもわからなかったから。貴方の持っている本も気になるものがあったし」

面白い女だ。後腐れ無く、此方に警戒を抱いている様子もなく接してくる。
見た目や能力の高さからして気に入ってはいたが、仲間以外で今までに関わった女の誰よりも好感が持てる。機嫌を取らなくてもいい、というのも好感を抱くのに一役買っていた。

思わずくつくつと笑いを漏らせば、きょとんとした表情をされる。

「なんでもない。まだ部屋が用意できてないんだったな……いっそこの部屋に住むか？」

問いかけながら隣に座る。反応を見てみたくて肩が触れあうくらいの位置に座ったが、ソフィアは顔色を変えない。ここもまた、その辺にいる女とは違う。
あまり自分で言うようなことではないが、俺は容姿が整っている方だという自覚はある。むしろそれを利用しなければいけない場面が多々あった。
だから女の扱いもそれなりに心得てはいるんだが、

「私は構わないけれど、ベッドは貴方が使ってね。今度こそ私はソファーで寝るわ」

あっさりと言い放って、ソフィアは本に目を落とす。男と部屋を共にするというのに警戒心すら微塵も見えない。
大分前、ヒソカにあっさりと抱き締められていたのを見た時も思ったが危機感が無さすぎる。見た目の年齢に反してまるで異性を意識していない。

少し試してみるか。

「ソフィア」

俺の呼び掛けで再び本から視線を上げるソフィアの髪を掬い、口付ける。その瞬間、手触りの良い髪から甘い香りが微かに鼻先を掠めた。
目を上げて見れば彼女はきょとんとしていて。やはり通用しないかと思って髪を離そうとするが、それは出来なかった。

「そういうのは、誰か気になる人にした方が良いわよ？」

間近で花が綻ぶような笑みを見せつけられ、思考が一瞬止まる。
ソフィアは笑っていた。照れたように頬を染め、溶けるような無垢な笑みで。

思えば彼女はくるくると表情を変えてはいたものの、微笑みやすました表情ばかりだった。
ソフィアがこういった笑みを俺に向けるのは初めて見た。だからだろうか、思ったよりも──くるものがある。
飽きるまで手元に置く気だったが、気が変わった。